2010年 2月 20日 (土)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉122 望月善次 マンガンの肉色の渣も

 マンガンの肉色の渣も濁り果て暮れ
  に向かへるチゥヴとグラス、
 
  〔現代語訳〕マンガンの肉色の沈殿物もすっかり濁っています。(この実験に使用している)チューブとグラスも暮れに向かっているのです。

  〔評釈〕「鴉と空」六首〔『アザリア』四号(大正六年十二月十六日)〕の最終歌。「マンガン(manganese独‖,Mangan)の名は、軟マンガン鉱が磁性を持つのではないかという誤解から生じたラテン語のmanges(磁石)に由来するという〔『日本大百科全書』〕。「査」は「水」と「査(木+且‖斜めの木)」からなる文字で「沈殿物」の意味となる。マンガンは銀白色の金属であるが、希酸には水素を発生して溶解しピンクを呈し「硫化マンガン」となるというから、「肉色」はこれを指すのだろうと。教えをこうた武井隆明岩手大学教授からは「高校の教科書にも出ている実験ですよ」と言われ、鮮やかなピンク色の写真などもお送りいただいたのだが、化学クラスにいたのに記憶がないから恐ろしい。いずれにしても、一首の眼目は、実験物(過程)と共に「暮れ」に向かうという感覚である。なお、第四号が十二月に発行されていることを考えると、「暮れ」には夕方と年末の両者が可能となろう。
  (盛岡大学学長)

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