2010年 2月 25日 (木)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉124 望月善次 大空にだんだら染めの

 大空にだんだら染めの幕ありと泣ける
  ごとくに振ふ桑の木、
 
  〔現代語訳〕大空には、「だんだら染め」の幕があるのだと、まるで泣いているように揺れている桑の木よ。

  〔評釈〕「冷? 熱? 愛?」十三首〔『アザリア』第五号(大正七年二月二十日)〕の二首目。「だんだら染め」の「だんだら」は「段がいくつもあること」で「だんだん」とも。「だんだら染め」は「段染め」と同じで「布帛等に種々の色で横段に染めること。」〔『広辞苑』〕。「だんだら」とくれば、『アザリア』第二号に掲載された賢治作品「夜のそらにふとあらはれてさびしきは、床屋のみせのだんだらの棒」を思い浮かべてしまうが、嘉内の作歌時には、賢治作品は念頭にあったのであろうか。歌舞伎にも詳しい嘉内のことだから「だんだら染めの幕」には歌舞伎の連想もあったのかという想像も楽しい。「振る」は、少し丁寧な説明を加えれば「物が生命力を発揮して、生き生きと小きざみに動く意。また、万物は生命を持ち、その発現として動くという信仰によって、物をゆり動かして活力を呼びおこす意。その信仰の衰えとともに、単に物理的な震動を与える意。」〔『岩波古語辞典』〕となる。
(盛岡大学学長)
 

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