2010年 2月 27日 (金)

       

■ 議員定数「38」でいいか 盛岡市議会で議論沸騰

 

盛岡市議会(佐藤栄一議長、定数42人)は、来春の市議選で適用する議員定数の見直しを内部で議論している。現行法律上の上限である「38」案を支持する議員が多数だが、「36」を主張する会派もある。議会運営の主導権を握っているのは、正副議長選で協力し合った第1、第3の両会派。この主流派は3月定例会中に改正したい考えだが、他会派は市民から意見を聞く必要性を訴えている。最も住民に身近な議員を選ぶものでありながら、近年の市議選投票率は国・県政選挙よりも低い。この現実を議会はどう考えるのか。谷藤裕明市長は24日の施政方針演説で「市民起点が第一」とする考えを盛り込んだ。国は地方議員の定数について法律上の規定を撤廃する方向だ。地方自らが判断するしかない。(大崎真士)

 「定数の根拠はそれぞれ分かる。内部で決めてしまうことに手続き上の問題がないのか。金ではないが身分にかかわる利害の当事者であり、この是非を議論するべきだ。市民に議員の考え方を説明して納得してもらわないと、内部だけで決めたという批判は避けられない」。

  豊村徹也氏(新盛同志会)は19日の議会運営委員会(熊谷喜美男委員長、委員11人)で、前回12日に提案した市民意見を聞く意義を説いた。再度の議論に対して熊谷委員長(盛友会)は「議会制度検討委員会で消化してきたことではないのか」と反応が鈍かった。

  他の盛友会の委員も「積み重ねてきたものを覆すのか」「議論は尽くされた」と抵抗。村田芳三氏(同)は「検討委開催中に市民意見は議員が個々に十分聞いたはず。定数36はただ減らせばいいというので出ただけだ」と一蹴(いっしゅう)した。

  昨年の検討委では市民意見を聞くよう提案されたが「個々の会派、議員で聞くので十分」と見送られた。これに対してある委員が「衆愚政治だ」と発言したことに、副委員長の伊勢志穂氏(改革・みらい)は「血管がぶち切れそうになった」と当時を振り返る。

  同会派は独自に調査し、判断材料とした。19日の議運で伊勢氏は「周囲の人から議員が聞いてもバイアス(偏り)がかかる。議員に身近な人たちは、わたしたちの活動を是としているので、市民意見を反映できない」と理解を求めた。

  佐々木信一氏(市民連合)は「検討委で議論されたので尊重したい。検討委の答申から議長が案を改めて示したのだし、市民はトータル的に判断しない傾向がある」と否定的だった。

  庄子春治氏(共産)は「異論があるなら慎重に議論し、検討によって合意されればよい」と述べ、実施に同意した。市当局の行うパブリックコメントに対しては市民意見を聞く手法として疑問を呈し、方法論の検討を求めた。

  休憩をはさんで1時間以上。議論の末に熊谷委員長は市民意見を聞くかどうか採決に踏み切ろうとした。しかし「議長案の示す見直し時期にもかかわることだ」と反発を受ける。この結果、3月2日に再度議論されることになった。

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 盛岡市議会の定数見直しは、第1会派の盛友会(17人)と第3会派の市民連合(6人)が定数38、3月定例会中に決定するとの議長案を全面支持する。第2会派の改革・みらい(7人)と新盛同志会(5人)、公明(2人)が定数36とし、市民意見を聞くよう主張。共産(5人)は定数38で、市民から意見を聞くことに賛同している。

  ■定数38人の妥当性

  定数問題は議員で構成する議会制度検討委員会で昨年12月末まで計8回議論された。多数派意見38、少数意見36を併記して佐藤議長に答申。これを踏まえ議長案が12日の議運で示された。決定時期を3月定例会とするのは「来春の市議選へ1年間の周知期間を確保する」ためだという。

  議員定数は地方自治法上、人口規模に応じて上限がある。市議会は前回07年が旧玉山村との合併後で42、前々回03年は38。現在人口30万人を切り、上限は38に戻る見込みだ。

  検討委の答申後、今国会に定数の上限撤廃を盛り込んだ同法改正案提出が判明した。

  しかし佐藤議長は「広大な面積で直接市民のニーズをとらえるという議員の役割を果たすため、従来の上限数を目安とするのが妥当」と強調している。

  合併して2倍の面積になったのに定数38。議員の空白区が市内に点在し、玉山区は面積の半分を占めながら選出議員は現在2人だ。選挙区制の話もない。これで市民が「妥当」と理解するのか。議長の主張ならば、定数38では足りない。

  ■市民理解へ努力を

  盛岡市議選の07年4月、03年4月の投票率はともに54%台。99年は60%と高かったのに、市民に最も身近な市政の投票率、関心度が低下した。07年度に絞っても県政、国政選挙の方よりも低い。

  投票率や議員定数により当選ラインは上下する。07年は1800票台、03年は2千票台。若手や無名の新人にすれば定数が多い方が当選する可能性は高まる。定数問題は、次期市議選に出馬を予定する現職市議の利害に大きくかかわってくる。

  市議は1人当たり年間約1200万円の報酬や政務調査費などを市の予算から受け取っている。市の部長級職員より受け取り額は大きい。この原資は市民から集めた税金だ。

  前回市議選で「議員はボランティアでいい」「20人いれば十分」と市民の声を多く聞いた。社会構造の変化、長引く経済不況で市民生活も苦しくなっている。

  市議会は市民に定数見直しの妥当性を堂々と説明し、理解してもらう努力が必要だ。内部で決めれば、来春の市議選にも影響しかねない。

      ◇     ◇

 県立大学の西出順郎准教授(政策評価論、公共経営論)に定数問題について聞いた。

  市民の意見を聞かずに市議会内部で検討して決めることは制度上、問題ない。過程でも瑕疵(かし)
はない。

  ただし当事者のことを当事者だけで決めることについて一つのきっかけとして考えることはできる。市民が市政について考える機会であり試金石になる。

  今の時代の「公共」は政治や行政ですべてが決まるわけではない。自分の首を絞める話はしにくいだろうが、市民が厳しい目で見る案件でもある。市民意見を聞いた方が自ら襟を正す姿勢が示せる。市民に削減しろという意見があるなら説明する義務がなおさらある。率先して嫌がるとろこへ飛び込んでいくことで評価される。

  市民に素材を提供した方が議会の存在意義を発揮できる。そして市民を巻き込んで変わっていく必要があるだろう。だから定数は何人がいいかではなく、何人にするべきかを議論することだ。


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