2010年 2月 27日 (金)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉125 望月善次 新聞の広告の絵に

 新聞の広告の絵に似たりとて林の杉
  は雪に濡れたつ、
 
  〔現代語訳〕新聞の広告の絵に似ているのだと、林の杉は雪に濡れて立っています。

  〔評釈〕「冷? 熱? 愛?」十三首〔『アザリア』第五号(大正七年二月二十日)〕の三首目。「新聞の広告の絵」の具体像は何であったかは、作品の範囲では知るべくもない。(仮に、嘉内がそうした類のメモ等を残していて、「新聞の広告の絵」の具体が明らかになる場合などを想像した場合、それが明らかになったことが、作品鑑賞にプラスに働くか否かは、作品鑑賞における「伝記的事実の活用」一般の場合と同じく、その長短を含めそれほど単純な問題ではあるまい。それはさておいて、)一首の核心は「広告の絵に似たりとて」にあろう。もちろん、物理的事実としては、「杉の林のが、雪に濡れて立っている」ことの要因が、「新聞の広告の絵に似ていること」にあるのではないことは、作者としては百も承知なのである。承知していながら、「広告の絵に似たりとて」と断言するところに〈作品〉は成り立ったのである。伝記的事実不足は、作品の核心を明らかにもするのだと言っておこう。
(盛岡大学学長)

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