2010年 3月 4日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉299 岩橋淳 水曜日の本屋さん

     
   
     
 (いささか季節はずれではありますが)クリスマスを控えた、都会の片隅の本屋(個人的には「書店」よりは「本屋」の響きが好ましい)での物語です。…決して広くはない店内ですが、そこを訪れるのは、こどもからおとなまで。通りに面したショー・ウインドーにはおすすめの本が並び、店内には絵本はもちろん重厚な書目もあって、この店のスタッフ、なかなかの目利きと見ました。

  この店に通い詰める、ひとりの女の子。そして彼女といつも行き会う、ひとりの老人。親しく言葉を交わすほどではないものの、女の子、「本屋仲間」として、ささやかなシンパシーを感じているようです。ただし、この老人は、深刻ななにかを抱えながら、ただ1冊の本に執着している様子。ある戦争について記されているらしいその本のページを、少しずつ、繰る毎日。「売れてしまわなければいいのだけれど」とつぶやきながら。

  いったい、老人の胸に去来する思いとは? 老人の胸中を、察しようとする女の子。でも、厚く重ねられた心の襞(ひだ)を読み解くことは、幼い彼女にはかなわぬこと。そんなある日、問題の本が書棚から消えていて…。

  喪(うしな)った時間は、取り戻すことのできないもの。そして、人の心に立ち入ることも、易しいことではありません。けれど、忘れてはならないのは、人を思いやる気持ち。

  ラスト、機転を利かした本屋さんのファイン・プレーが光ります。

  【今週の絵本】『水曜日の本屋さん』S・ネーマン/文、O・タレック/絵、平岡敦/訳、光村教育図書/刊、1575円(2007年)。
 

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