2010年 3月 6日 (土)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉128 望月善次 七つ森、雪の斜面を

 七つ森、雪の斜面を行くとして天の
  大日に輝かれけり、
 
  〔現代語訳〕七つ森の雪の斜面を進んで行きますと、(周囲も私自身も)天の大きな日に照らされ輝いたのです。

  〔評釈〕「冷〓 熱〓 愛〓」十三首〔『アザリア』第五号(大正七年二月二十日)〕の六首目。第四句の「天日」を、保阪本の書き込みによって「天の大日」とした。「七つ森」は、ご存じの秋田街道沿いの雫石町にある生森山をはじめとする山や丘などの総称。賢治愛好の地の一つで、例えば『校友会会報』第三四号(大正六年七月)には、「箱が森七つ森等」として、「おきなぐさとりてかざせど七つ森雲のこなたにひねくれし顔」(後に「歌稿〔B〕四八八」へと改稿)等の十三首を収めている。嘉内にとっても「馬鹿旅行」等でその山すそを通っているところ。「大日」はおそらく「おおひ」の訓(よ)みとしたのだろうが、『広辞苑』等に「大日(おおひ)」の見出し語がないように、一般的な訓みではないから「大日如来」を示す「だいにち」を暗示することにもなろう。第三句の「行くとして」の「として」は、微妙な語彙(い)で、〔現代語訳〕も一筋縄では行かぬ表現だが、「短歌」らしい表現でもある。
  (盛岡大学学長)


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