2010年 3月 10日 (水)

       

■ 〈命のアート〜るんびにいのアトリエから〉1 板垣崇志 るんびにい美術館

     
   
     
  花巻市に「るんびにい美術館」という小さな美術館があります。美術館というからには、美術作品を展示する場所なのですが…。

  るんびにい美術館は、ちょっと変わった美術館です。ギャラリーを中心に、アトリエやカフェ、そしてお菓子工房までが、一つの建物に一緒になっています。そしてギャラリーでは、知的障がいなどの、障がいのある作者によるアートを中心とした展覧会を開催しています。私はそこで、展覧会の企画や、アトリエで障がいのある方たちの作品制作をサポートする仕事などをしています。

  るんびにい美術館のメーンテーマは、「命の輝きとの出会い」。障がいのある作者によるアート作品を中心に据えながらも、障がいの有無を越えて、見る人の「命」の鼓動を呼び覚ますようなあらゆる作品-時には「作品」という言葉さえ越えるもの-を、縦横無尽に紹介したいと考えています。

  私が初めて障がいのある方のアートに出会ったのは、今から12年ほど前のことです。ご縁のあった障がい者施設の施設長の方が、施設で暮らす方たちの作品を私に見せてくれました。その作品は、大学で美術を学んだ私にとって、とてつもなく衝撃的なものでした。誰に教えられもせず、誰の模倣もせず、ただ自分の表現衝動だけに忠実に描かれた作品。そこに見事なまでに独創的な美が実現し、根源的な力強さがみなぎっていました。

  自分がなぜそれほど大きな衝撃を受けたのか、そのときは分かりませんでした。今、私が理解できるのは、美は私たちの頭脳が生み出すのではなく、私たちの命そのものが生み出すものだということです。私が見たものは、命の美しさと力強さそのものでした。そしてその美しさと力強さを通して、私自身の命が揺さぶられたのだと思います。私は見失っていた自らの命に、その作品を通して出会ったのです。

  そのとき私が出会った作品の一点を、次回ご紹介したいと思います。

  これからこのコラムの中でみなさんと一緒に、障がいのあるアーティストたちの、命のアートに出会う旅へと出かけたいと思います。アーティストの命が、あなたの命を揺さぶる-そんな出会いの旅に、出発しましょう。 (るんびにい美術館アートディレクター)

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