2010年 3月 11日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉300 岩橋淳 赤いおおかみ

     
   
     
  本をお客様にお薦めしたり、当欄のように紹介させていただいたりすることを生業とはしていますが、お客様に本を教わることも同じくらい、いやそれ以上あるのではないかと思っています。今週のご紹介も、そんな中の一冊。

  一匹の犬が、この世に生を受けます。柔らかな寝床と、火のはぜる暖炉。かれは恵まれていた、と言っていいでしょう。それが、戦火に追われての旅の途中、荷台から転げ落ちてしまったことから、波乱の幕が上がるのです。

  かれの命を救ったのは、一匹の牝オオカミ。やがてかれは、命をつないだばかりか、群れの一員として、オオカミとして、成長することになります。野を駆け、獲物を狩り、月に吠える。赤い毛並みのちっぽけなテリア犬は、いつしか群れの中心的存在になっていきます。

  ……物語は、これで終わりではありません。さらなる転変が、かれを見舞うことになるのです。

  運命を受け入れ、誇りと共に生きること。自らの内の、ささやかな野生を信じること。

  そして、自らを御し得なくなったときの処し方についても、かれはオオカミの群れから学んでいたのです。

  出会いと別れ、生と死。小さくとも懸命に、そして誇り高く生を貫く姿勢が感動を呼ぶ、心震わせる一冊です。

 【今週の絵本】『赤いおおかみ』F・K・ヴェヒター/作、小澤俊夫/訳、古今社/刊、2415円(1998年)。



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