2010年 3月 16日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉132 望月善次 雪の山、峙つ山の逆光に

 雪の山、峙つ山の逆光に弁当箱はあ
  はれ冷えたり、
 
  〔現代語訳〕ああ雪の山よ。そびえ立つ山の逆光によって、本当に弁当箱も冷えたのです。
  〔評釈〕「冷鴎 熱鴎 愛鴎」十三首〔『アザリア』第五号(大正七年二月二十日)〕の十首目。「峙つ(ソバダツ)」は、もと「そばたつ」の清音で「高く聳える」などの意〔『広辞苑』〕。「ソバ(稜、傍)」は、「山の切り立った斜面」を表す「そは」と同根。斜面が原義。また、鋭角をなしているかど、斜めの方向の意。日本人は水平または垂直を好み、斜めは好まなかったので、斜めの位置、とがったかどの場所の意はやがて、はずれ・すみっこの意に転じ、さらに少しばかりのものなどを指すようになった〔『岩波古語辞典』〕。「逆光(逆光線)」は、言うまでもなく、対象の正面から照らす光線の「順光線」〔『広辞苑』〕の対概念であるから、「雪の山」に当たった光が、話者の弁当を照らしているわけである。前回の「雪の雲、カンバの林蓋ひ来てべんとう(ママ)の箱はまつしろに冷ゆ、」でも指摘したが、「弁当の冷え」と「逆光」との関係は論理的なものではなく、それだからこそ「作品」となり得る。
  (盛岡大学学長)


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