2010年 8月 12日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉320 岩橋淳 ヘンリーいえをたてる

     
   
     
  人生思索の書として名高い『ウォールデン 森の生活』のエッセンスを絵本化したものです。人里離れた湖畔に一軒家を建て、単身、素朴な生活を実践したアメリカの作家、H・D・ソローによるこの記録は、ナチュラリストのバイブル的1冊として100年以上読み継がれています。これを絵本にしようという壮大な試みは、さすがに1冊では足りず、何冊かに分けておこなわれています。

  主人公のクマ、「ヘンリー」とは、ソローその人の擬人化ならぬ擬クマ化キャラクター。本作では、森の木をわずかばかり伐り、加工し、組み立てにかかります。そこへ入れ替わり立ち替わりに友人が現れて、感想、助言を述べて行くのです。曰く、「食事をするには小さい」「本を読むには暗い」「ダンスをするには狭い」…。

  でも、そのたびににこやかに応えるヘンリーには、確信があるのです。丹精込めた裏の豆畑は、そのまま食堂に。脇の草原は、天然光あふれる図書室に。そして家の正面の、池へと続く小道は、そのままダンスのできる客間に。

  いつしか人は、環境になじむことを忘れ、これを征服すると称しながら、自らの技術や理屈に閉じこもってはいないか。それを文明、文化と勘違いしてはいないか。

  美しい絵と、簡潔に語られる「真実」に、すがすがしい感動が呼び覚まされます。

 【今週の絵本】『ヘンリーいえをたてる』D・B・ジョンソン/文・絵、今泉吉晴/訳、 福音館書店/刊、1260円(2002年)。



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