2010年 8月 24日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉103 及川彩子 野外オペラの夜

     
   
     
  ミラノとベネチアのちょうど中間にあるベローナの街は、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」の舞台でも知られます。人口30万人余り。ここアジアゴから、車で約1時間半です。

  その旧市街の中心に、紀元1世紀建造の古代ローマ円形闘技場があります。世界遺産の一つで、通称アレーナ。ここで毎夏、野外オペラが開かれます。

  イタリアの作曲家ベルディ生誕100周年を記念して始まったもので、今度が88回目。バカンスの始まる6月から8月にかけ、3日おきに上演され、私たち家族も早々にチケットを買いました。

  今年の演目は、ベルディの「アイーダ」、プッチーニの「蝶々婦人」、ビゼーの「カルメン」など5作品。私たちは、古代エジプトが舞台の「アイーダ」を選びました。小学2年の娘も、テーマ曲を口ずさんでいるからです。

  まだ昼のように明るい夕方6時、アレーナの前のレストランやバールのオープンテラスには、入場を待つ黒ドレスやネクタイ姿の人たちが、ワイングラスを傾けていました。

  夜9時開演。石段の自由席は約4千円、舞台正面の椅子席は約2万円。総席数1万8千席が、見る見るうちに埋まっていきます。

  真っ青だった空が闇に包まれると、巨大なピラミッドの舞台装置が照らし出されました。銅鑼(どら)の音を合図に、オーケストラの演奏が始まると、アイーダら主役のソリスト、300人もの合唱団、バレリーナ…出演者は総勢500人余。壮大なスケールのエジプト絵巻が展開していったのです〔写真〕。

  幕ごとに早変わりする大掛かりな装置。石段席からは、オペラグラスでもよく顔の分からないソリストたちですが、歌声はマイクなし。でも、よく聴こえ、響き、感情表現までも胸に迫ってくるのでした。

  オペラという総合芸術が、古代遺跡で展開されるスケールの大きさに、時間を忘れ、真夏の夜の夢に浸ったのです。

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします