2010年 9月 21日 (火)

       

■ 〈夜空に夢見る星めぐり〉264 八木淳一郎 望遠鏡教室その2

     
  夏の終わりに立ち枯れる高原のヒマワリ。西の空にはベガ(右)とアルタイル(左)が仲良く並んで沈んでいく。(9月10日午前0時19分、滝沢村柳沢地内)  
 
夏の終わりに立ち枯れる高原のヒマワリ。西の空にはベガ(右)と
アルタイル(左)が仲良く並んで沈んでいく。
(9月10日午前0時19分、滝沢村柳沢地内)

 
  かつての天文少年たちはメガネ屋さんで売っているレンズキットとボール紙で望遠鏡をつくりました。キットというのは、一辺が5〜10aの薄っぺらな紙の箱の中に、1枚ものの対物レンズとコンタクトレンズのように小さな接眼レンズ用のレンズが、ペラペラの説明書とともに入っていたものを言います。

  1枚ものの対物レンズは、シングルレンズあるいは単レンズと言って、安さが売り物だけにあまり良く見えない代物です。それは、色収差といって天体や景色の縁に赤や緑の色がついて、結果として像がぼやけてしまうものでした。

  現代は違います。自作用のキットでも色消しレンズという2枚合わせの対物レンズが当り前になっていて、これによって星も風景も気持ち良くのぞくことができるようになりました。

  色収差を打ち消すための色消しレンズにはさまざまなタイプがあり、メーカー品では普及品がアクロマートという色消しレンズ、高級なものはアポクロマートといって完全色消しというものです。

  その中間には数は少ないですが、セミ・アポクロマートというものもあります。

  レンズを使った屈折望遠鏡はさまざまな面で利点がありますが、ミラーを使った反射望遠鏡に劣る一番のものは色収差がある、ということです。反射望遠鏡には基本的に色収差がありません。

  レンズには色収差のほかに、ザイデルの5収差といって、湾曲収差、歪曲収差、非点収差、球面収差、コマ収差といったものがあり、いかにそういった収差をバランス良く補正して最小限に押さえるかがメーカーや光学設計者たちの腕の見せどころとなっています。それにはレンズの材質もかかわってきます。

  一方、反射望遠鏡というものはレンズではなくミラーを用いた望遠鏡ですが、光はガラスの中を通過せずに表面のアルミメッキで反射されるので、ガラス材は何でもいいように思えますが、こちらはこちらで外気温によってガラスがゆがむ、といった問題に悩まされます。

  そこで熱膨張率の小さなガラス材が求められます。さらに、対物レンズでちょうど筒の先をふさがれた形の屈折望遠鏡と違い、筒の底にミラーが置いてある反射望遠鏡では筒先が開放されていて、これによって筒の中の空気の対流が起こり、一種のかげろう現象によって星像が乱されてしまう欠点があります。

  ガラスのゆがみも筒の中の対流も大きな望遠鏡ほど影響が出やすく無視できない問題です。それを回避するためには何時間もかけて外気温になじませなければいけません。

  研究用ならばじっくりと待って夜半ころから使用すればいいのですが、子どもたちや市民のための天文台ではそういう訳にもいきません。

  そこで国内のあちこちの公共天文台の大型反射望遠鏡をのぞいた人たちから、さっぱり良く見えないという声があがってくることになります。
(盛岡天文同好会会員)

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