盛岡タイムス Web News 2010年 12月 16日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉338 岩橋淳 エゾシカ

     
   
     
  北海道に住む獣医師・竹田津先生は、全国的には、映画化された「子ぎつねヘレンがのこしたもの」など、野生動物たちへの温かい視線でその生態を描く文筆家として名の知られた方。本稿でも、絵本の原作者、あるいは北の動物の紹介者として、登場してきました。

  シリーズ「北国からの動物記」は、ハクチョウ、キツネ、シマリスと、愛らしくもたくましく北海道の大地に生きる動物たちを自ら撮影し、文章を寄り添わせた好評シリーズ。その新作は、エゾシカです。

  越冬のために年2回、数百`に及ぶ大移動を敢行するエゾシカの集団。食物を求め、温暖の地を求めてのこの移動は、意外にもあまり知られていなかったようです。野生動物の集団移動としては国内でも大規模なものとして関心を持った竹田津氏は、この大移動を追跡することに。足かけ1年に及ぶ、長い旅です。

  意外にも寒さに弱いエゾシカの実態や、子育ての様子、短い夏の旺盛な食欲など、密着調査ならではの距離感で、レポートがなされます。実際には懸命に生きるためだけのかれらの行動が、人間からは「害獣」として扱われることへのくだりでは、ページを繰る手を止めて、考えさせられます。

  本能の命ずるままに生きるということ。これを遮ることなど誰にできようかという思いに駆られるのも、むしろ自然なことに思えてくるのです。

 【今週の絵本】『エゾシカ』竹田津実/文・写真、アリス館/刊、1470円、(2010年)。


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