盛岡タイムス Web News 2011年 3月 7日 (月)

       

■ 〈幸遊記〉10 照井顕 高田和明の三陸旅情

 「樹氷エレジー」(関根恵子主演・大映映画主題曲)を歌って、1970年にコロムビアからデビューした歌手・高田和明(本名・菅野健一)には、10万枚を記録した「三陸旅情」と「夜の指輪」という二つのヒット曲がある。

  メディアに乗り、火がついての10万枚という一般的なそれとはまったく違い「地道な努力」という言葉がよく似合う、自らの手売りによってのみ達成したヒット曲なのである。それにかけた情熱もまた9年、10年と、気が遠くなりそうな年月をかけて、キャンペーンしながら歌い歩いた不屈の根性が成せたもの。

  単純計算で1日30枚ずつ10年間も自らの出前歌唱のみでの達成となれば、そこそこの歌手が逆立ちしたってできるものでも、続けられるものでもないことは誰の目にも明らか。だから当時の所属元であったビクターは「特別賞」としての「ヒット賞」を2度、彼に贈った。

  「マニキュア占い」のB面だった「三陸旅情」を、発売から7年後の1983年、三陸鉄道の開業(84年)に照準を合わせ再発売し、三鉄ブームの火付け役として、3年で4万枚を売り上げた彼の一生懸命な姿に、ジャンルは違えど、同じ音楽に生きる者として感動を覚えた僕は、まだアルバムのなかった彼のLPレコードを作ろうと決心したのだった。

  全12曲、書き下ろしのオリジナル。僕も1曲作った。演奏はジャズ系のミュージシャンに頼んで、東京でスタジオ録音。その「去りゆく季節」(86年)の発売に合わせて、東京杉並公会堂で、オーケストラをバックに初のワンマンリサイタル。彼の出身地で、僕の店ジョニーがあった陸前高田からは、大型バス1台を貸し切って応援に駆けつけた。会場は超満員、これも彼の手売りだった。

  8枚のシングル。1枚のアルバム。この数もまた歌手生活40年余りの彼、高田和明にとっては、少なすぎる数字ではあるが、自ら手売りした数十万枚もの数となれば、何十タイトルものリリースに匹敵するだろう。最新盤は2007年にキングレコードから発売した「棄てましょう / その名はフジヤマ」のシングルである。
(開運橋のジョニー店主)


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