盛岡タイムス Web News 2011年 3月 18日 (金)

       

■ 〈潮風宅配便〉20 草野悟 沿岸の人の心の美しさこそ、復活の力になる

     
   
     
  3月11日14時46分、日本人誰もが未経験の巨大地震と大津波が襲ってきました。風光明媚(めいび)な三陸は、無残な姿に変ぼうし声も出ない状態です。すべてを消滅させたと言っても過言でありません。友人、知人の中にもいまだ連絡なしが多数おります。数え切れない犠牲者の方々、これ以上の苦痛、心痛はない身内の方々。まったく言葉が見つかりません。

  3月13日、友人を探すため山田に向かい、目にした光景がこの写真です。友人の姿も家もなく覚悟していたところ、人影を見て近づいてみると、親友と奥さんが立っていました。奇跡です。驚きよりうれしさより、ただただ手を握り締めていました。

  その後もう一人の友人を探すため、壊滅状態の大沢漁港近辺に出向き、避難所になっている大沢小学校に行ってみると避難者リストに名前がありません。もう一方の避難所ふるさと会館でも名前が見つかりません。落胆していた時、近寄ってきたボランティアの若い女性に尋ねましたら、「生きています」との返事。膝が折れるほどなによりの朗報でした。

  何度もボードの避難者リストを確認し、涙を流すご老人もいました。混雑した伝言板の周囲は人だかりでごったがえしていましたが、皆さん譲り合って後ろの人を前に誘っていました。

  ボランティアの方々が手際よく、てきぱきと動き回りお昼の汁物を被災者の人たちに配っていました。われ先と食事になだれ込む光景はまったくなく、誰もが譲り合い、身内を亡くした方でさえ「ありがとうございます」と礼儀正しく順番に受け取っていました。

  海をボーっと眺めていたご老人に「食べないとだめだよ」とボランティアの方が汁物を手渡していました。日本人のなんと素晴らしい心、そしてモラル、相手を思いやるいたわりの心。これ以上の国があるでしょうか。

  見ているだけで何のお手伝いもできない私でしたが、胸が熱くなり涙が流れるばかりでした。こういう国民性、岩手の県民性、沿岸の人々の心の美しさこそ「きっと復興する」の力であると信じてやみません。

  いまこそ岩手県民あげて無事だった人たちが力を合わせ、小さな力でも何ができるかを考える時です。被災者の方が親戚の家(盛岡)に行きたいけど、車のガソリンがない、と嘆いていました。

  救助隊優先であることは間違いないところですが、できる限りそうした被災者の方々にガソリンを回すべきです。もちろんガソリンばかりではありませんが、誰を優先するかを考え、行動するだけでも立派な支援です。

  内陸部はすでに電気もわずか1日で復旧し、食べ物が少ないといいながらも、快適な生活が保障されています。山田に限らず沿岸の全ての避難所で寒さに震え、食料を分かち合い助け合って頑張っています。

  「財産はこの服だけ」と言って強がった友人は、海水で濡れた下着を乾かして着ているため、べとつきが残るそうです。下着1枚手に入らないのです。岩手の人なら、日本人なら心の中にきっと「助け合い、結いの心」があるはずです。そう信じてやみません。「きっと復興する」「必ず復活する」と強く信じています。県庁で自衛隊の方々や他県の応援隊の方々が徹夜で必死に支援物資を仕分けし送っています。できる限り多くの物資を集め「人数分」などと言わずに多めに送ってください。「不公平」など考えないでください。

  1枚のせんべいを分け合って生き延びてきた人たちです。横取り、独り占めなど決して起こりません。続々と全国から善意が届くと思いますが、初期が大事です。「できる限り多く」を切に願っています。
(岩手県中核観光コーディネーター)


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