盛岡タイムス Web News 2011年 3月 19日 (土)

       

■ 〈お父さん絵本です〉350 岩橋淳 ちょっとまって きつねさん!

     
   
     
  かつて西洋の童話におけるオオカミやキツネは、獰猛(ねいもう)、狡猾(こうかつ)をもってヤギやヒツジやコブタたちに恐れられていたものですが、本稿で何度となくご紹介したとおり、近年は主客逆転、昔日の豺狼は知恵の限りを尽くした弱小動物にしてやられるのみならず、今や完全になめられ、小馬鹿にされる始末。してやられるのは専ら粗暴、愚直なオオカミの役回りかと思いきや、膂力はオオカミに劣るとも、その狡知では数段上を行くと思われたキツネまでもが、まんまとしてやられる例も珍しくないのです。

  ある夜のこと、迷子になったうさぎのぼうやが単身、丘の上に佇んでおりました。これを見つけたはらぺこキツネ、これに背後から忍び寄り、大きな口をあけてガバッと、…ここで一気にイッてしまえばよいものを、おかしなルールが彼を縛るのです。

  「ここは、出会ったウサギとキツネが、おやすみなさいのあいさつをする場所」

  これに盲従してしまう時点で、もうキツネの負け、なのです。この後ウサギを家まで連れて帰らされ、寝物語を語らされ、おやすみなさいのうたを歌わされ…。

  結末には、もう触れますまい。

  あとで思うのは、冒頭、ウサギのぼうやとやら、はたして迷子、だったのか? なんだか、はじめからキツネをはめようと待ち構えていたんじゃあないか、なんてね。

  【今秋の絵本】『ちょっとまって、きつねさん!』K・シェーラー/作、関口裕昭/訳、光村教育図書/刊、1400円(2004年)。

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