盛岡タイムス Web News 2011年 3月 22日 (火)

       

■ 〈夜空に夢見る星めぐり〉277 八木淳一郎 星はみちしるべ

     
  鎮魂の夜。月齢7日の月が西の空にかかっていた。市中は停電だが、街路には光が走っていた。この光景を見ることはもうないだろう。(3月11日午後9時50分、岩山展望台)  
 
鎮魂の夜。月齢7日の月が西の空にかかっていた。市中は停電だが、街路には光が走っていた。この光景を見ることはもうないだろう。
(3月11日午後9時50分、岩山展望台)
 
  春と言えばおとめ座ですが、もう一つ、誰もが知っている北斗七星も忘れてならない春の代表です。正確には北斗七星は星座の名前ではなく、おおぐま座の一角を占める星の並びに付けられた名前です。

  おおぐま座の一角というのはどこかと言いますと、熊の腰からお尻、そしてしっぽに当たる部分です。北斗七星は西洋でもビッグ・ディパーと呼ばれるように、わが国でもひしゃくの升と柄になぞらえられています。

  その長い柄の部分が星座絵に表される熊のしっぽなのですが、本物の熊のしっぽがこんなに長いはずもありません。神話では、熊が天に上げられる時、しっぽをつかまれてぐるんぐるんとハンマー投げよろしく回されて放り投げられたために長く伸びてしまったとされています。

  ひしゃくの柄の端から2番目の星はミザールの名前を持つ二重星です。二重星というのは名前の如く二つの星(恒星)がくっつくようにして並んでいるもので、これには見かけの二重星と連星があります。

  連星というのは二つの星が共通の重心の周りを回り合っているものです。みかけの二重星は文字通り距離の違う星が私たちから見た時にたまたま接近して見えるものです。

  こういった二重星は色や明るさの対比が大変美しいものが多く、夜空のあちこちにちりばめられています。その多くは望遠鏡や双眼鏡を通して見ることのできるものですが、ミザールは肉眼で見ることのできる数少ないものの一つです。

  古代のアラビアでは兵隊の視力検査に使われたという話です。視力に自信のある方は試してみてください。すぐそばにポツッとした小さな星が見えるでしょうか。

  ひしゃくの升の4つの星のうち、柄とは反対側の二つは、どなたもご存じ、北極星を捜し当てるのに用います。そこでこの二つは指極星と呼ばれます。二つの星をつないで5倍延ばしたところに北極星を見つけるごとができます。

  大昔、いかだや小舟にのって夜の大海原へと繰り出した人々はこうして方角を知り、無事島にたどり着くことができたのです。

  先日の大地震で電気が消え、盛岡の夜は真っ暗になりました。山の中のように星が降るように見え、明け方近くには夏の大三角と天の川が暗黒帯さえ携えて東の空に輝いていました。

  津波のあと、山や建物の上にとり残された人たちの頭上にも同じように満天の星が輝いていたことでしょう。

  星は私たちのみちしるべです。目指す方角を教えてくれるばかりでなく、苦難を乗り越え生きていく上でのみちしるべになるに違いありません。つらいとき、そっと星空を仰ぎ見てください。私たちの祖先がそうしてきたように。
(盛岡天文同好会会員)

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