盛岡タイムス Web News 2011年 3月 26日 (土)

       

■ 〈潮風宅配便〉23 草野悟 陸前高田に不可欠の人、友人の死

     
  7年前のはがき。撮影は伊藤光高氏「家のカタクリの花畑」  
 
7年前のはがき。撮影は伊藤光高氏「家のカタクリの花畑」
 
  「ここはす、収入の少ない町なもんで、町民の人たちはす、苦労も多いのす。だから私たちがとにかく少しでも生活が楽になるように頑張らなければと思うのす。でもね、みんな明るいんですよ。前向きだし地区のことも協力してやっているし、いい街ですよ」と陸前高田の伊藤光高さん。2月17日に教育委員会の建物でそんな話をしました。

  いつもほんわかとした笑顔と優しい口調で話してくれます。「あの人はす、本当はいい人なのす。表現が下手なもので誤解受けるんですよ」と、これも伊藤節のいつもの人物評価です。とにかく悪く言わない人です。3月末に無事市役所を定年するところでした。

  奥さんは、このだんなさんが大好きで、「早く定年してゆっくりしてもらいたい」と常々口にしています。庭いじりが好きで春夏秋といつも花でいっぱいの庭が自慢です。おばあちゃんは、数年前におじいちゃんが他界し、その後伊藤光高さんご夫婦と仲良く暮らしています。

  このおばあちゃんの「紫蘇漬け」は絶品中の絶品で、秋になるといつもたくさんの「紫蘇漬け」を送ってくれます。東京に転勤していたときに、この紫蘇漬けが送られ、「東京を離れよう」と決心し退社しました。

  この話は伊藤家に行くたびにしますから、おばあちゃんはとても困ったように喜びます。伊藤光高さんは、何よりも陸前高田を愛し、地域の人たちを大事にし、家族思いの素晴らしい人でした。

  11日から17日まで全く連絡が取れず、携帯電話は何十回とかけても「お客様のおかけになった…電源が入ってないか…」の音声のみしか返ってきません。17日遅く「絶望らしい」との報です。頭が真っ白になりました。

  翌日「遺体安置所に安置されているかもしれない」との報。うそであってほしいと何度も祈りました。娘さんが何日も探し回っているという情報も入りました。伊藤光高さん、陸前高田市にとって不可欠の大事な方でした。残酷な悪魔は、こうした素晴らしい方ものみ込んでしまいました。

  多くの人たちがこの底なしの悲哀の渦にいます。何万もの人たちが同じように家族を亡くし友を亡くしつらく悲しい思いをしています。一刻も早く、「明るさ」の戻る地域にしたいと願うばかりです。

  「そろそろカタクリの花が咲くので泊まりに来て」と耳元で光高さんの声がします。
(岩手県中核観光コーディネーター)

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