盛岡タイムス Web News 2011年 4月 5日 (火)

       

■ 〈夜空に夢見る星めぐり〉278 八木淳一郎 ある星空の思い出

     
  見渡す限りがれきの地となった陸前高田の海岸地帯。南東の空には垂れ込めた雲の合間から、さそり座が姿を見せていた(4月3日午前2時)  
 
見渡す限りがれきの地となった陸前高田の海岸地帯。南東の空には垂れ込めた雲の合間から、さそり座が姿を見せていた
(4月3日午前2時)

 
  夜の10時を過ぎ、子どもたちはとっくに夢の中、のはず。ところが2階の廊下のあたりが妙にざわついているのです。

  行ってみると、大勢の子どもたちが、口々に「眠れなーい」と言って部屋を出たり入ったりしているではありませんか。

  今宵は幸い月明かりもなく、窓の外には澄みきった11月の大気のもとに実にたくさんの星が輝いています。「よし、じゃあ少しだけ星空を眺めてみようか」。小生の一言に子どもたちはみな興奮して「わーやったー」。

  そんな気配に部屋に残っていた子も出てきて30人ぐらいの顔が窓辺に鈴なりです。予定していた星空観察会の時間にはあいにくの曇り空となって、小生自身残念に思っていた矢先のことでした。

  そこへ見回りの先生。「すみません、少ししたら寝かせますから」。先生が優しくほほ笑んでくれました。

  「ほら、あそこに3つ星が並んでるのが見えるだろ。あれは有名なオリオンのベルトにあたるところなんだよ」。

  すると一人の子が「3つの星の下にモヤッとしたのがあるけど、あれは何なの?」「おーよく気が付いたね。あそこはオリオン大星雲といって宇宙のガスが輝いているんだよ。そこで今も星が生まれてきてるんだ」。

  「えー?星って生まれてくるんだ。じゃあ年もとるのかな」。「うん、そうだよ。ほらオリオンのあの赤い色をした星とかは年とった星だね。オリオンのずっと右上の方にも赤い色の星、アルデバランって言うんだけれど、あの星なんかもそうだ。そうそう、そのまた右の上にボーッとしたちっちゃな星の集まったのが見えるかな」。

  「あ、あるある。あれは何なの?」さすが子どもたちは目がいい。「あれは、すばると言って、目では6個くらいしか見えないけれど、ほんとは200個もの星の集団で、まだ生まれて2500万年しかたってない赤ちゃんみたいな星なんだよ」。

  「えっ、2500万年」「私たちの太陽は誕生してから50億年もたつんだよ」「じゃあ、やっぱりすばるは赤ちゃんなんだ」。「あっ流れ星!」「え、どこどこ?」

  子どもたちの歓声がここ陸前高田の野外活動センターのいてつく夜空に白い息となって上がっていきました。今から20年近く前のことです。

  あのときお世話になったセンターの方々、そして子どもたちは今、どうしているのでしょう。3年間、毎年行われた「星と海のロマン学」の講師として呼ばれ、短い時間でしたが、大勢の子どもたちと一緒に過ごした高田。

  美しい高田のまちなみや高田松原の砂浜とともに、生涯忘れることのできない思い出です。
(盛岡天文同好会会員)

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