盛岡タイムス Web News 2011年 4月 6日 (水)

       

■ 〈口ずさむとき〉223 伊藤幸子 満塁ホームラン

 白球を追ふ少年がのめりこむつめたき空のはてに風鳴る
                             春日井建
 
  「まだ見たい」「もっと見たい」と息づまる思いで観戦したセンバツ高校野球。「私たちは16年前、阪神淡路大震災の年に生まれました。…人は仲間に支えられることで大きな困難を乗りこえることができると信じています…」と、堂々と、切々と選手宣誓を行った創志学園(岡山)の野山慎介主将の声は、3月23日快晴の甲子園の空に響いた。未曾有の東日本大震災から12日、大会旗は半旗が掲げられ、開会式の冒頭には震災の犠牲者に黙祷が捧げられた。従来の入場行進はなく、32校整列、アルプス席でのブラスバンドや華やかな応援合戦も禁止。「がんばろう!日本」のスローガンがまぶしい。

  私は高校野球が大好き。今大会も全試合自己流のノートに書きつけて、食事の間も惜しんで見続けた。どの回もドラマがあり、年来の記録ノートに親しい監督さん方を画面に拝見すると数年前の勝負でもすぐよみがえり、対戦チームとの試合運びを思い出す。解説者もスピーディーに選手の心をつかんで励ましてくれる。

  さて大会3日目1試合目は日大三高と明徳義塾高校。どっちにも勝ってほしい強豪チームだ。7回裏で4対4の同点になり、8回表、守りの日大三高に乱れが見えたりでこのとき、キャッチャーの鈴木貴弘くんが顔に打球を受けてしまった。どよめき、一時中止。誰かかけよって何か拾うさまが見えた。まさかコンタクトレンズかとも思ったが、のちに歯が2本抜けたと聞かされた。小休止の後再開。8回裏、負傷した鈴木くんがタイムリー2ベースで逆転というすさまじいゲームだった。

  今大会からカウント表示が審判コールにならって「BSO」とされ「スリーボール、ワンストライク」などとアナウンサーも言いにくそうだった。放送中何度も地震があり震度が示され、画面両側には福島原発、放射線測定値などが常に明記される。もちろん途中変更や放映打ち切りもあり、異例ずくめだった。

  4月3日の決勝戦は東海大相模と九州国際大付属高校。久々に元東北高校の若生監督の采配に痺(しび)れた。6対1、準決勝の対履正社戦で史上初の満塁ホームラン2本も打った東海大相模チームに勝利の栄冠は輝いた。まだ冷たい春風のもと、やっぱり球児達のユニホーム姿はいい。「生かされている命に感謝して全身全霊で」プレイするとの宣誓にたがわず、大きい感動をもらった大会だった。
(八幡平市、歌人)


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