盛岡タイムス Web News 2011年 4月 8日 (金)

       

■ 〈不屈の意志〉日本企業は合理化をしすぎた ラピアス電機福勢社長に聞く

     
  震災の影響について語る福勢社長  
 
震災の影響について語る福勢社長
 
ラピアス電機(本社・東京都)の福勢慶昭社長に、東日本大震災津波が製造業に与える影響について聞いた。同社は自動車、電機の部品生産装置を製造し、八幡平市に主力工場がある。日本経済が打撃をこうむり、国内産業の空洞化が一層進む可能性を懸念し、組織と個人のクライシスマネジメントの必要を説く。(鎌田大介)

 -震災が東北、岩手県内の製造業に与えた影響は。

  福勢 東北全体を見ると装置業関係の2次加工業者、下請けの被害は比較的軽微だ。被害が大きいのはメーカー系の巨大システム、大会社の大きな建家など。裾野を広げると大会社のメーカーと下請けの生産ネットワークのつなぎ目がどこかで切れているかもしれない。そうなると計画停電やガソリン不足が響く。素材供給が止まるかもしれない。

  -ガソリン不足による素材への影響は。

  福勢 まだ在庫があって顕在化していないし、問題が上がってきていなかった。今後の半月、1カ月の中で顕在化して障害が出始め、生産、出荷できない。素材の奪い合いと流通ルートが問題になる。素材が中小に回らない、極端な値上げ、インフレに拍車をかけるか。すると品質とコストがついていけない。3カ月、半年、1年のスパンの中で見て、東北の中央に対する距離を考えると、東北に中小中間加工業が残れるか残れないかという問題になる。ガソリンは通勤や通常の仕事で動く分にはショートしない。先日も自分で車で東京まで品物を運んできたが、岩手はガソリンの値段が高い。

  -震災による日本の国際競争力への影響は。

  福勢 地震にかかわらずコスト競争のあおりと、大手メーカーが世界に生産拠点を分散化し、現地生産化する影響は何年か前からじわじわ出ていた。電力不足や東北の生産設備その他のダメージで世界分散化、日本の空洞化が加速する。海外メーカーから見ると目先の義援とは別に、ビジネスのシェア争いからこれをチャンスにという動きも活発化するのではないか。

  何とかすべき一番の根本はエネルギーだ。石油一極集中で、脱石油は原子力だった。そこに東京電力と原燃の問題が出てきた。原燃政策が止まり、新規発電所の計画ストップの動きが一部に出始めている。それは世界的なエネルギー政策の変更と代替エネルギーの選択肢、もうひとつは徹底した省電力、省エネ。そこから将来の家庭生活、工場生産のあり方、将来の車のあり方の選択肢や生活スタイルなど、従来の文化をがらりと変えるきっかけになるのではないか。

  -エネルギー源を分散する必要性は。

  福勢 新幹線や自動車会社などの巨大ピラミッドがいかに脆弱(ぜいじゃく)だったか考えると、各在所ごとの生活自立体制をどう積み上げていくか。生産体系や生活体系、特に生活防衛圏などの仕組みを考えないと。そういう観点からは関西などの人口が多いところより東北の方が生活自立圏のインフラはやりやすい。これを機会に東北特有の生活文化を世界的モデルにどう作っていくか。

  一極集中の問題と、ライフラインなどのバックアップシステムや、流通のバッファの考え方がなくなっている。ネットワークが一発切れると全部ダウンしてしまう。ある意味では合理化のしすぎ、トヨタ方式の無駄の排除のしすぎ。1カ所止まると途端に全部枯渇する。大きな組織体の中で、リスクやクライシスマネジメントの狙いが、経営合理化とか、コスト競争に偏りすぎ。むしろ自分たちの生活や生命などの活動をどう自己保全するかという方に向けたクライシス、リスクマネジメントが全く欠落していた。チェック能力を見直さなければならないことへの警鐘ではないか。

  岩手、宮城は地震そのものの家屋の倒壊や設備の損傷は大きくなく、ほとんど津波だ。津波についても全員がそうだということではないが、聞いてみると、逃げるとき大丈夫だという人がやられているという話を聞く。個人的にもリスクやクライシスに対してどういうチェック能力を持っているかが問われているのではないか。

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