盛岡タイムス Web News 2011年 4月 11日 (月)

       

■ 〈潮風宅配便〉32 草野悟 そのまま残った剥製ツチクジラ

     
   
     
  街ひとつが消滅したような陸前高田市。松原は消滅し海岸で残った数少ない建物「海と貝のミュージアム」です。「海と貝のミュージアム」ネーミングを提案した時は、市議会のご長老から怒られました。市の大事な財産である鳥羽、千葉両先生の貝の収蔵品を納めるのに、そんな軽い名前はなんだ、「貝の博物館」ならいい、と。懐かしい思い出です。

  担当は伊藤光高さん(津波・故人)、建築は一緒にパラオまで貝を集めに行った長谷川博光さん(故人)。お二人の力であの大津波にも負けず立派に残りましたよ。土台もびくともしていません。

  残念ながら内部はがれきの山になっていましたが、外観は見事に残っています。素晴らしい技術です。感動です。内部は無残でしたがもうひとつの奇跡がありました。苦労して剥(はく)製にしたツチクジラがそのまま残っていました。あの大津波にも負けない鯨、「よく我慢したな」と何度も頭をなでてきました。

     
   
     
  「海と貝のミュージアム」が縁で、パラオの子どもたちを陸前高田市へ招き、めいめいの家にホームステイしてもらいました。パラオの言葉が分からないのに平気で会話していた伊藤光高さんのおばあちゃん。パラオの男の子と長谷川さんの長男が家の中で花火をして節子ママから雷を落とされたり、たくさんの思い出の詰まったミュージアムです。

  みんなでパラオを訪問したときには、「子どもたちが世話になった」と村人総出で歓迎してくれました。「貧しくて何もできないけど」と朝早くからお稲荷さんを作ってくれました。できる限りのおもてなしに伊藤光高さんも長谷川博光さんも大粒の涙でした。

  まさに奇跡の建物です。ありがとうと感謝の気持ちでいっぱいです。いつまでも皆さんの姿は生きています。
(岩手県中核観光コーディネーター)

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