盛岡タイムス Web News 2011年 4月 15日 (金)

       

■ 〈東日本大震災津波〉
   避難者の体調管理に気配り 雫石町の保健師がサポート

     
  一時避難者の保健相談をする雫石町の保健師  
 
一時避難者の保健相談をする雫石町の保健師
 
  「きのうの体操はどうでしたか」「ご飯はきちんと食べられていますか」。雫石町鶯宿のホテル加賀助の一室で町の保健師、朝賀絵美さん(28)が声を掛ける。同町では沿岸部から一時避難している避難者を対象に各宿泊施設で平日の毎日、保健師が保健相談を行っている。避難所生活の中で、処方してもらった薬が切れたり、歯科や眼科での診察を求める避難者が毎日相談に訪れる。

  ■さまざまな相談

  保健相談の会場は和室に机が一つ置かれたスペース。この日は午前9時30分の開始時刻から、次々と避難者が訪れた。血圧を測りに来る人、花粉症の薬を切らして相談に来る人、生活が少し落ち着き定期的に検診を受けていた病気が気になり始めた人。相談内容は実にさまざまだ。

  大槌町新町の中嶋せつ子さん(74)は白内障の手術を受けた後からテレビを見るときや外出の時にかけていた眼鏡を津波で流された。「眼鏡に頼ってばかりいても駄目だが、あんまり無理して悪化しても」と初めて保健相談を訪問。保健師に相談し、町内の眼科を受診できるよう手配してもらった。「年をとってあちこち悪くなるから、相談できるのは本当に安心で助かる」と感謝した。

  避難所での保健師の活動は通常の業務とはかなり異なる。朝賀さんは「普段は担当地区があって、何年も見ている人が多い。ここはチームで、みんなで関わっていかなければならない」と話す。複数の保健師が交代で施設を担当するために「必ずこの人を見てほしい」など、保健師同士の打ち合わせを通したカルテの引き継ぎも重要な仕事になる。

  体調管理や血圧測定のほか、薬を一度に渡すと飲み忘れてしまう高齢者もいることから、朝昼晩とそれぞれ小分けにした薬を毎日手渡す工夫もしている。病院に行くためのバスの予約、全く土地勘がない避難者に診療所の場所を地図で説明したり、保健師の枠を越えた支援も必要になる。

  ■会話を通して心のケア

  心のケアも重要な仕事だ。「話を聞いてあげて解決に結びつくことはないが、いくらかでもそれでスッキリするのであれば」。相談に訪れた人の血圧を測りながら、何げない会話をすることも心がける。町内の傾聴ボランティアも各施設を訪れて避難者の話に耳を傾けている。

  大槌町栄町の八巻洋子さん(56)は高血圧のため毎日保健相談で血圧を測定する。「地震の速報が鳴るたびにドキドキしていたが、最近は少しずつ落ち着いてきた。保健師さんといろいろな話をしては、ここで発散している。安心できるし、やっぱりいいですね」。この日は夫の俊美さん(61)も初めて保健相談を訪れ、歯の治療をするために雫石町内の歯科医を紹介してもらった。

  朝賀さんは「こんな状況は初めてなので、保健師もこれでいいのかと思いながら手探り。環境の安全は確保できたかもしれないが、今後の生活のことを考えて不安も出てきているようだ。体調に絡めて眠れましたかとかご飯食べられましたかなど声を掛け、心のケアもできれば」と話す。

  同町では避難してきた際に避難者全員に氏名や健康状態を記入する健康チェックシートを提出してもらうとともに、各施設の相談室の位置も知らせた。通院のために平日の毎日、近くの鶯宿温泉病院までの患者バスも運行する。このほか、宿泊施設が独自に避難所と町役場周辺を結ぶ町内医療機関運行バスを週2回運行。町内の開業医などを利用する患者の利便性を確保している。


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