盛岡タイムス Web News 2011年 4月 19日 (火)

       

■ 〈東日本大震災津波〉障害者同士で被災者支援 ろうあ協会などで活動

     
  県立視聴覚障がい者情報センター内に設置された東日本大震災聴覚障がい者支援岩手本部。聴覚障害者と支援者らが、沿岸被災地の支援について打ち合わせを重ねる  
 
県立視聴覚障がい者情報センター内に設置された東日本大震災聴覚障がい者支援岩手本部。聴覚障害者と支援者らが、沿岸被災地の支援について打ち合わせを重ねる
 
  被災地で暮らす障害者の生活支援や心のケアが課題だ。音声情報が中心の避難所でコミュニケーションが取れず孤立感を深める聴覚障害者、津波で住み慣れた町の様子がすっかり変わり身動きできなくなった視覚障害者など、健常者では気がつきにくいストレスを抱えている人が目立つ。障害者らが被災した仲間を助けようと支援団体を結成し、支援に乗り出している。

  県ろうあ協会、岩手盲ろう者友の会、県中途失聴・難聴者協会など県内8団体は先月、「東日本大震災聴覚障がい者支援岩手本部」を立ち上げた。盛岡市のいわて県民情報交流センター(アイーナ)の県立視聴覚障がい者情報センター内に本部を設置。沿岸被災地に住む聴覚障害者への訪問や補聴器の交換電池の支給などに取り組む。

  本部の活動を支援している同センターの情報支援員(手話通訳士)高橋健一さんによると、震災で聴覚障害者は周りの様子を知るのが困難な状況に陥った。停電が続き、情報はラジオなど音声による伝達が中心に。津波の警報をはじめ、行政の支援制度など健常者であれば容易に入手できる情報が得られにくい。「周囲の人とも十分にコミュニケーションが取れないため、相当なストレスを抱えているはず」という。

  さらに緊急課題となっているのは「心のケア」の問題だ。聴覚障害者は映像で記憶する力が強いため、震災の惨状をフラッシュバックし「ショックで夜、眠れない」といった訴えが目立つ。手話で気兼ねなくコミュニケーションが取れる仲間が寄り添うのが一番、と内陸部の聴覚障害者らが3〜4人のグループで被災地の聴覚障害者を訪ねるようにした。

  被災地を訪問した県ろうあ協会の高橋幸子会長は「わたしですら、見た光景が目に焼き付いて眠れなくなった。被災地であればなおさら。仲間が直接、会いに行くことで心を穏やかにしてもらえれば」と語る。聴覚障害は見た目では分からない。「聴覚障害者も聞こえません、援助が必要です、と勇気を持って訴えて。周りの方も、いろいろな情報を紙で書くなどして積極的に伝えてほしい」と願う。

  補聴器を流出したり、約1週間で交換が必要になる専用電池が入手できずにいる難聴者も多い。高橋さんは「難聴者は発声できても聞き取れない。正面でゆっくり話すか、紙に分かりやすく書いて伝えてほしい。音が聞こえない人にとって暗闇は本当に怖いもの。真っ暗にしない配慮も必要。こうした配慮は高齢者にとっても優しい」と説明。

     
  震災直後、避難所となったアイーナで手話通訳、要約筆記のボランティアの姿も(3月12日)  
 
震災直後、避難所となったアイーナで手話通訳、要約筆記のボランティアの姿も(3月12日)
 
  「支援が必要な人がいれば、本部からも出向いて支援するので情報を上げてほしい」と呼び掛ける。

  一方、全国の視覚障害者の支援者らで組織する日本盲人福祉委員会も「東日本大震災視覚障害者支援岩手県対策本部」をアイーナの同センターに設置、視覚障害者の支援に当たっている。

  岐阜県から支援に駆け付けたチーフコーディネーターの棚橋公郎さん(岐阜アソシア・視覚障害者生活情報センターぎふスタッフ)は防災士の資格があり、阪神淡路大震災の際も支援活動を経験。「阪神淡路大震災は地震のみの被害だった。残った建物もあり、視覚障害者が動く手掛かりがあった。津波では町がすっかり変わってしまい、状況はまったく把握できていないと思う」と窮状を説明する。

  県内では視覚障害者を支援する拠点となる場所が視覚支援学校などに限られていて、支援態勢を整えるのにも時間がかかる。県内で被災した視覚障害者は2千人はいるとみられるが実態は把握できていない。対策本部では視覚障害者団体に入会している人の名簿を頼りに支援者リストを作成し、被災地域にスタッフを派遣している。

  棚橋さんは「非常時だからと我慢し、周りにお願いしたいことも頼めずにいる視覚障害者が多いはず。外の空気を吸いに、周りの人が散歩に連れ出してくれるだけでも助かる。避難所では掲示物などを読み上げる支援も必要だ」と訴える。

  問い合わせは▽聴覚障がい者支援岩手本部(電話・ファクス019-601-2710、Eメールsanrikubackup@gmail.com)▽視覚障害者支援岩手県対策本部(電話090-1704-2448)へ。


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