盛岡タイムス Web News 2011年 4月 20日 (水)

       

■ 〈潮風宅配便〉36 草野悟 ようやく笑顔が…

     
   
     
  この人は、と言いますと「山田湾の漁師佐々木俊之さん」で隣が娘さんです。漁師が魚を獲るだけじゃなく、自分で加工しておいしいものを作るという夢に向かい「山田の牡蠣(かき)くん」や「山田のあかちゃん」など有名になった商品を作ってきました。

  大震災の前にはNHKの「フロントライン」という番組でも紹介されたばかりです。「さあ今から突っ走るぞー」と新たな雇用も生み出した矢先、3月11日がやってきました。

  新築の工場と自宅は、土台を残して消え去りました。佐々木俊之さんは、異常な海の状態を察知し、従業員を避難させてから「火事になったら大変なので」と工場の火を消したところで海水が押し寄せてきました。

  一気に逃げ出し足元まできた津波からようやく逃れ一命を取り留めました。この太った体で全力疾走?、すみません冗談はさておき「よくご無事で」と私も安堵いたしました。

  その後、娘さんと二人で友人の自宅に世話になり、避難生活を続けています。しばらくは「目はうつろ」「呆然」「上の空」状態で、「もうだめだ」と何度も思ったそうです。

  そんなとき、商品開発コーディネーターの五日市知香さんに「何しょげてんの、もう一度挑戦、一からやり直しですよ」と言われ「はっと目が覚めた」ということです。

  住む家、工場、工具、機械、何もありません。財産の船は陸に上がって「がれき」です。お金もない、…でも「やるぞ」と勇気を絞り、動き出しました。

  県の宮古振興センターもしっかり応援です。五日市知香先生も目を光らせ、3日に1回宮古、山田に出かけ、メタボ体格の尻をたたいています。「やればなにか出てくるんですね」と手ごたえを感じはじめました。

  さあ、もうすぐです。あと一歩です。岩手の底力を発揮するときです。6月1日の商品再開を目標に動き出しました。口数の少なくなった娘さんも、もうすぐ笑顔になります。きっと。一歩ずつ「岩手の力」ですね。
(岩手県中核観光コーディネーター)

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