盛岡タイムス Web News 2011年 5月 1日 (日)

       

■ 〈不屈の意志〉あさ開・藤尾正彦常務に聞く 暖房切って重油を仕込みに

     
  藤尾正彦あさ開常務  
 
藤尾正彦あさ開常務
 
  あさ開(村井良隆社長)は、大震災の直後も休まず仕込みだけは続けたという。在庫の重油は仕込みにだけ使用。社内の暖房を切った。日本酒は生き物。温度管理が品質を左右する。何よりも製品が優先だった。杜氏でもある藤尾正彦常務(66)に被災後の経過や今後の展開などを聞いた。(大森不二夫)

  -被災状況は。

  藤尾 酒の仕込み途中での地震だった。酒造りは生き物が相手。途中で切れると大変になる。すべての暖房を止めた。醗酵中のもろみは冷たい水を注いで温度が上がるのを調整した。瓶詰め用のベルトコンベヤーのインバーターの一部が壊れ、モーターが回転しなくなった。たまたま修理していた1台があり助かった。ただ10日間、稼動は中止した。

  ほかの機械の一部も壊れた。これは当社で修理できない個所だった。大変に困ったが市内のなじみの電気店に来てもらい直してもらった。ありがたかった。在庫の重油も底を付き始めた。これは一大事と思い、片っ端から石油元売会社などに電話をかけた。しかしほとんど駄目だった。被災地や緊急用が優先で話にも乗ってくれない。そんな中に理解してくれた会社があった。生き物を相手にする酒造りを理解してもらった。これも大変ありがたかった。地場の店や会社に感謝している。生産が戻り出したのは4月になってから。3月の売り上げは40%ダウンした。

  -観光の影響は。

  藤尾 当本社には酒造工場があり、土産品売り場、レストランもある。三つが1セットで盛岡市内の観光ルートの一つにもなっている。本当は今が一番忙しい季節。こうして話をしていられないほど忙しい。バスでひっきりなしに大勢の観光客が来る。それぞれの持ち場で対応する。来社すればあさ開のファンになってもらい、観光後に酒の注文が入る。それが今回の大震災の3月11日からぴったり途絶えた。そして電話はキャンセルばかり。とても残念だ。本格的に観光が戻るのはいつのことやら。

  -従業員やパートはどうしたか。

  藤尾 従業員には自宅待機してもらった。パート、アルバイトにも同じような措置を講じた。当社では施設からの紹介で障害者にもパートで働いてもらっている。彼らにも自宅待機してもらった。そうしたら、施設からいつ仕事ができるのか、早く仕事させてほしいと言われた。今の状況を説明して復旧すればまた雇うと話し納得してもらった。酒は嗜好品だが、この酒を製造・販売してちゃんと雇用にも貢献していること、会社の社会的な意義などを改めて知らされた。

  -被災地への支援は。

  藤尾 当社でも被災地に支援物資を送った。仕込みで使用するやわらぎ水や甘酒を送った。被災地に支援物資を届ける活動も支援している。地域のボランティア団体などには支援物資を集める場所として提供した。レストランでは義援金活動をしている。また社員に2人、沿岸出身者がいる。彼らの親族は無事だったが家を流された。1カ月間、仕事を休ませた。支援はこれから長くかかろう。さまざまな形で支援したい。酒組合でも一致協力して行う。

  -地域経済の活性化には何を。

  藤尾 地産地消と地産外消をどんどん行い、地域で金が増えて金が回るようにすること。雇用に通じる。そのためにも自粛はしない。行政に考えてもらいたい。自粛することで1社だけでなくさまざまな関係先にマイナスが及ぶ。メーカーが自粛すれば、流通、小売り、飲食店などに影響が出る。雇用が減る。飲食店の多くでパートやアルバイトが働く。彼らの仕事を奪ってしまう。

  -ユーチューブ(動画サイト)に登場してキャンペーンを行ったが。

  藤尾 初めての試みだ。それまでユーチューブの存在も知らなかった。とにかく県産の酒を全国に紹介し、味わってもらうことで県内経済を活性化させたかった。おかげで首都圏を中心に、全国各地から受注した。これからも地産外消の推進を図りたい


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