盛岡タイムス Web News 2011年 5月 2日 (月)

       

■ 〈東日本大震災〉歌声よ心に響け 山田町の避難所で不来方高音楽部が合唱

     
  畳敷きの布団が積み重ねられた体育館で、不来方高音楽部の合唱に耳を傾ける避難者たち(山田北小学校)  
 
畳敷きの布団が積み重ねられた体育館で、不来方高音楽部の合唱に耳を傾ける避難者たち(山田北小学校)
 
  山田町立山田北小学校の体育館では141人の町民が避難生活を送っている。大所帯だが、ほとんどが顔見知りなこともあって居住空間をダンボールで仕切ることはしていない。その見晴らしのいい空間がコンサートの会場になった。時刻になると、町民は積み重ねられた布団の横で簡易ステージを向き、耳を澄ませた。歌声が共鳴するにつれて、我慢していた涙がポロポロとこぼれ落ちる。わが子を膝に乗せて抱きしめる母親。薬指の指輪に触れる女性が目に入った。(菊地由加奈)

  県立不来方高校の音楽部(佐々木千帆部長、部員31人、村松玲子顧問)は、沿岸被災地を回り、復興支援コンサートを開いている。4月1日には釜石・大槌・山田、6日は宮古・田老・岩泉、30日には山田・宮古に「日本一の歌声」を届けた。

  コンサートは「切手のない手紙」で幕を開ける。曲間にメッセージを語りかけながら計15曲を歌いきった。同日は山田町出身で盛岡市在住の木村悌郎さん(元同町教育長)も駆けつけ、石川啄木作詩の「ふるさとの」や「はつこい」など3曲を独唱した。

  木村さんは村松顧問の恩師。村松さんは同じく木村さんの教え子で同級生のクノップ直子さん(オーストリア在住のピアニスト)から託された贈り物も同町へ届けた。

  中身はメッセージカードと義援金100万円。義援金は現地の人をはじめ子どもたちが貯めた小遣いという。コンサートの最中に沼崎喜一町長へ手渡された。

  部長の佐々木さんは「4月1日のコンサートはまだ時間が経っておらず、皆さん疲れている様子だった。きょうは皆さん涙を流してくださった。同じ環境にいると、辛いのはみんな一緒だからと言って泣けないはず。歌を聞いたら涙が出て気持ちがすっきりしたという言葉をいただくと、お役に立てたと思えた」と話した。

  花田まさ子さん(83)は「子どもがいないものだから本当にうれしかった。涙が出てきた」と、コンサ ート終了後も目を潤ませていた。

  「良かった」と話した千代川正栄さん(60)は、中学校卒業後から山田の海で生きてきた漁師。この日、漁協から養殖漁業就業アンケートをもらってきた。提出期限は5月6日。

  「やりたいのはやりたいが、これから借金をしてまで漁師を続けるかどうか。船は残ったが、車がないので希望の仮設住宅に入れなければ海まで通えない。やるとしてもワカメは1年でできるようだが、カキなどは3年かかる。それまでは無職。借金を残しても漁師を続けるべきか」と、複雑な心境で耳を傾けていた。
 

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