盛岡タイムス Web News 2011年 5月 5日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉353 岩橋淳 はっぴいさん

     
   
     
  荒井良二という作家については、その画風をご存じの方の中には、雪だるまがごときタドンのまなこに短い手足、一見幼児のいたずら書き(?)にも見えるような登場人物が思い描かれることと思います。

  ところがかれらが画の中で動き、話し、考えるさまに付き合っていると、対峙している読者の内側に向かって、穏やかな何かがすぅっと溶け込んでいくような、フシギな効能が備わっていることに「後になって」気づく、ことが多いのです。特異と言うか、不思議な作家です。

  本作の舞台は、紛争のただ中にあった、ある国(背景に配置された戦車群の放つ「異物感」!)。争いや貧しさに囲まれた日々を過ごす少年と少女が、それぞれの思いを胸に、山の頂上に現れるという「はっぴぃさん」に願いを叶えてもらうため、旅をします。

  のんびり屋の少年と、あわてんぼうの少女は、そもそも道連れなどではありません。第一に、歩調が合いません。偶然に行き合ったりもしますが、別々に頂を目指します。

  ただ、まだ見ぬ「はっぴぃさん」への期待と抱えてきた願いの重みは、同じなのかもしれません。

  かれらは、目指す頂上で、はっぴぃさんに逢えるのだろうか。そして、「しあわせ」の本当の意味は?
  二人とともに頂上を目指しながら、知らず、読者も自問を促されることに気づく時には、……、ほら、これが荒井ワールド、なんです。

  【今週の絵本】『はっぴぃさん』荒井良二/作、偕成社/刊、1365円、(2003年)。

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