盛岡タイムス Web News 2011年 5月 7日 (土)

       

■ 〈東日本大震災〉眼科診療バスが活躍 医師を乗せて被災地へ

     
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  東日本大震災津波では沿岸部の眼科医も被害を受け、震災直後は診療ができない状況が続いていた。こうした状況下で白内障や緑内障、花粉症など目の不安を抱える患者のために活躍しているのが眼科診療バス「Vision Van(ビジョンバン)」。車内には眼圧を計る機械や眼鏡の度数をチェックする機械などが整備され、診療所クラスの診察が可能となっている。
(泉山圭)

 2日、大槌町の寺野弓道場付近。駐車したビジョンバンに午前9時30分の診療開始から次々と患者が訪れた。診療に当たるのは岩手医科大学、慶応大学の医師のほか、盛岡市内と神奈川県内の開業医の計5人。患者の症状や困っていることを聞き、車内の機器で検査して対応する。医薬品や眼鏡、コンタクトレンズなどはメーカーや医師が提供したものが無償で患者に配布される。

  同運動場内の施設で避難生活を送る伊藤ナツさん(91)は10年ほど前に白内障の手術を受け、以来2カ月に1度薬をもらうために眼科に通院をしていた。この日は薬を処方してもらった。

  壊れた老眼鏡の代わりに度数を検査して新しい眼鏡も提供してもらい、かかりつけの眼科が釜石で再開したことも聞いた。「白内障の薬が切れ、薬を付けなくてもいいといわれていたが、心配で来た。見てもらって安心した。いい情報も分かったし、本当に助かる」と感謝していた。

  同町の中央公民館に避難している澤田由希子さん(43)は、自身と息子のコンタクトレンズをもらいに来た。震災直後は気を張っていたためコンタクトレンズを入れたままにしていても気にならなかったが、手入れもできずにだんだんと不安になってきたという。

  以前のビジョンバンの診療で使い捨てコンタクトを提供してもらい、現在はそれを使用している。「今まで盛岡にコンタクトレンズを買いに行っていたが、今は車もない。眼科もやっていないので、こういったものがすごく助かる」。診療の結果、改めて目に異常がないことを確認し安心していた。

  岩手医大の黒坂大次郎教授によると、患者のニーズも震災直後からだいぶ変化してきているという。3月下旬は眼鏡や目薬が流されたが、身動きがとれずに困っている患者が多かった。最近は状況がだいぶ落ち着いてきて、コンタクトレンズなどの提供が多くなってきた。ガソリンなども普及し、釜石などでは再開する開業医も出てきた。一方で、避難所にいるお年寄りだとそうそうは通えないのも現実だという。

  アメリカで発生したハリケーン「カトリーナ」で活躍したビジョンバンは、今回の震災を受け4月上旬に緊急導入された。ビジョンバンのメリットは、診療所自体が移動できる点。被災地ではそれまで避難所になっている学校の一室を借りて診療をしてきたが、新学期を迎えるにあたり移動しなければならない場所が出てきた。

  黒坂教授は「被災地では情報がなかなか伝えづらい。そういう意味では同じ場所で定期的に診療できるのは大きい。大型の機械を入れられたので、視力検査などもできるようになった」と話す。ペイントが施された大きな車体は目立つ。眼科の医師が来ているということを患者に伝える意味でもビジョンバンの導入の効果は大きかったという。

  ビジョンバンの巡回場所は月曜が大槌町の寺野弓道場周辺(午前9時30分〜午後6時)、火曜が陸前高田市のサンビレッジ(午前9時〜午後3時)、水曜が山田町の旧庁舎横(午前10時〜午後3時)。

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