盛岡タイムス Web News 2011年 5月 10日 (火)

       

■ 〈潮風宅配便〜三陸の津波被災現地から〉44 草野悟 元気の素は黒豆の甘露煮

     
   
     
  真っ黒です。光っています。やや硬めに炊き上げた黒豆、優しい甘さで噛(か)みごこち、おいしさ満点なのです。どこにも売っていないおばあちゃんの味です。箸(はし)で一粒ずつ摘み口に運びますが、オートメーション機械のように、腕が勝手に動き、どうにも止まりません。スプーンですくってまとめて口に運ぶのは流儀に反します。実に器用な箸裁きで一粒ずつ、これが日本人なのです。

  なぜ冒頭からこんな話をするかと言いますと、いつも被災地に差し入れをしてくれる矢巾の高舘農園のおばあちゃんが、私個人に差し入れしてくれたからです。

  「甘いものは元気になるよ」とたくさん頂きました。食べても食べても減らないくらいたくさん頂きました。でも毎日食べているものですから、当然減ってきます。なくなったらまた遠慮しながら顔を出します。

  避難所の友人に「今何が食べたい?」と聞きますと、「おいしいもの」と返ってきます。「トンカツは」と言うと「トンカツ食べたい」と言います。「寿司(すし)は」と言うと「寿司食べたい」と言います。

  命をつないでくれた支援物資に感謝していますが、少し余裕が出てきますと、次に「おいしいもの」となってくるのは当然です。テレビの番組が解禁され、お笑い芸人が美味美食の限りを尽くしています。本当に罪ですね。

  でもおいしいものを食べたいという欲求こそ、次の元気のステップです。岩手には「食の匠」がたくさんいます。岩手だからこその味がたくさんあります。手間暇かけた素朴な料理においしさが詰まっています。早く皆さんで「おいしさ自慢」ができる日が来ることを願っています。でもこの黒豆は独り占めです。
(岩手県中核観光コーディネーター) 

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