盛岡タイムス Web News 2011年 5月 11日 (水)

       

■ 〈不屈の意志〉岩手経済同友会・永野勝美代表幹事 内陸企業へも警鐘

     
  永野勝美岩手経済同友会代表幹事  
 
永野勝美岩手経済同友会代表幹事
 
  岩手経済同友会の永野勝美代表幹事は、三陸沿岸の被災地に赴き、自治体の長や経済人と面談してまとめたレポートを「岩手経済研究」の今月号紙上に発表した。十数ページ、登場人物も10人を超える本格ルポで、現場に立って今後の復興の道筋を展望している。大震災から2カ月。永野代表幹事に、被災地の復興と岩手全体の経済の活性化のために何が必要なのか、行政への提言内容などを聞いた。
(大森不二夫)

  -現地を訪ねての印象は。

  永野 まさに1千年に一度の大震災と感じた。すべてが一変していた。岩手銀行の新入行員時代は宮古支店でスタートした。陸前高田市には支店長として赴任した。懐かしい場所であり、多くの知り合いがいる。しかし、今回の大震災で多くの知人が亡くなった。大変、感傷的な気持ちになった。しかし、私の感傷的な気持ちとは裏腹に、現地ではみな頑張っている。いつまでも感傷に浸っていられないと逆にハッパをかけられた。不眠不休の活動を続けている鳥羽太陸前高田市長をはじめ、震災の翌日から店頭販売を開始した米谷春夫マイヤ社長、苦難に負けず市場を開いた大井誠治県漁連会長ら、みなどう再建するかを必死に考え、決断し、行動している。大事な故郷を守り抜く覚悟と決意を感じた。やらなくてはならない使命感も強く感じた。

  -復興へ向けた新たな提言をまとめているようだが。

  永野 現段階ではあくまで私見だが、いくつかの提言を検討している。仙台市に関東大震災の時のような復興院を設置する。後藤新平のような大局的見地に立ち、実行力のある人物がリーダーとなる。やるべき仕事を明確にし、実務官僚を使いこなす。今のような対策本部や会議など似たような組織は要らない。役所的なことをしている時でない。被災地の国有化も考えてもらいたい。憲法違反ともなろうが緊急事態であり仕方ないのではないか。例えば陸前高田の高台を国有化し、そこに太陽パネルを設置した野菜工場を建てる。役所、病院、銀行なども移設するなどすれば、新たなまちが形成される。二重債務も早期に解消すべき課題。そのためにも国、県、金融機関などで基金を作り、平成の徳政令として債権放棄をする。そのときは県が主体となり査定委員会を設置する。漁業を復活させるためには、県漁連が中心になり各組合の漁業権を集め証券化する。それを基に国に補償してもらい、長期リースで船や網を利用する。また経済総合特区をぜひ創設してもらいたい。大震災で企業の海外移転や電力需給の関係から西日本移転が加速しており、歯止めが必要だ。固定資産税、法人税など減免措置を行い、新たな企業、産業に来てもらう。そしてものづくり基地岩手を発信する。農業の法人化を急ぐ。林道開発による林業の見直しも進める。この機会を生かして新たなモデル形成に向け力を発揮する。

  -被災地の復興のために内陸部の企業の役割は。

  永野 内陸部は幸いにして直接的な被害は少なかった。しかし、これから間接的被害が出てこよう。つまり経済は生き物でみなつながっている。経済は循環しているのだから。沿岸部の被害は内陸部にも及ぶ。大手からの受注や仕事も減る。さらに行き過ぎた自粛により経済は回らず倒産が多発する。極めて悪循環となる。当面、岩手県の経済は縮むだろう。このようなことを前提にして、内陸部の企業は、まずは自社は自社で生き延びることに取り組むべきだ。これから起こりそうなことを予測し課題を抽出し、そこから自社が取るべき方向性を導き出す。生き残るために創造性が求められる。そしてスピードを出す。県外大手は大方の仮設住宅を受注している。首都圏や関西から企業が企画書を持参して売り込んでいる。地場の企業も自ら進んで提案しないと。

  -平泉が世界遺産の勧告を受けて観光産業の活性化につながると期待されるが。

  永野 どのように生かすかが課題だ。財政上の制約がある中で、私は修学旅行を誘致することに力を入れるほうが得策と考える。また来てもらうように。そのためにも単なる観光としてでなく浄土思想を知らせる。教育的見地からも必要だろう。平和を希求した平泉の思想を。被災した沿岸部では防災体験を。対極的な関係となるが貴重な人生体験となる。ぜひ、心に刻む旅をしてもらいたい。過去、岩手に来た全学校にまた来てもらうようなアプローチを。

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