盛岡タイムス Web News 2011年 5月 13日 (金)

       

■ 〈胡堂の青春育んだ書簡群〜学友たちの手紙〉24 八重嶋勲 二十世紀は如何なされし

 ■後藤清造

  48 巻紙 明治34年1月14日付
宛 盛岡市馬場小路七 照ゐ方 野村長一君 しん展
発 石鳥谷(花巻市石鳥谷町好地) ムン・マウント (後藤清造) 一月十四日
 
  二十世紀ハ如何なされし
御手紙難有拝見仕候、郵券送上しハ雑誌来てあらバ送り越されたい許りに致せし儀ゆゑ決して々々々御疑念有之間敷候、
さて家兄の病氣なるに御見舞被下難有存じ候、病氣ハ心臓病にて始めハ随分さわぎ候へども、昨今ハ餘程快方ニ赴き候まヽ御安心被下度候、
新刊書物の御批評など面白く讀み申候、
文藝倶楽部の発賣禁止ニハ驚き候、また裸体画かとぞんじ候、新小説の絵はがきハ田子君より参り候、牛らしきものの絵の様覚江候、私ヘハ絵端書ハ五枚参り候、新文藝の儀ハさもあるべくと存じ候、明星、文庫の趣味豊富なるハ喜ばしく候、
せうれうたう会ハ如何なり様子ニ候哉、
新年賀会ハ如何なされし?私もこヽ四、五日たヽバ出盛し得べしと思ひまいり候、といってそれまでニハ過ぐべしと思はれ候が、さならバ様子など御しらせ被下度候、
中々盛んの事なるべしと独り笑つぼに入り申候、
藤澤座のみ之居り随分面白かるべしとぞんじ候、粂八など来らバ内丸座も驚べくほんとうならお互嬉しく候、お正月の御馳走ハ羨ましく候、杜陵吟社にて新俳人御発見のよし、よその事とも思はれず嬉しく候、私も一ツまね致候まヽ御覧ニ入れべく御笑ひ被下度候、
先日大迫の法事あるをきヽ、佛十句やり申候、
  仏壇や山茶花の色寒げなり
  山茶花を仏に参らす女の子
  寒念仏けふハ仏の日なりけり
  仏前に新酒さヽぐるやもめかな
  水仙の水こぼれたる仏の間
  水仙の床にかけたるかけ佛
  神棚に仏うつすや煤拂
  水仙の鉢うゑにけり仏の日
  午過ぎて雪となりたる仏の日
  炉開やけふハ仏の日なりけり
これハ唯今やりしものに候、床の畫を仏畫にすれバ花活の山茶花ちりて雪ふりそめぬ、水仙の枯葉集むる折しもあれ、目しるし尼の鉢たヽきゆく山寺に親をとむらひ帰り来れバ枯野寒しや吾子泣き居ツ(事さららしく候)、
これも然り
  福寿草日南にうつす頭巾哉
  福寿草山茶花に少し後れけり
  賣初や景物にそふ初暦
  初暦謹賀新年の端書哉
  遣羽子に小路せましや松の内
  松の内将軍馬にめされけり
  日に映る廣野千里や霜柱
  朝の霜午過ぎて少し時雨けり
  冬の川雨ハ時雨となりニけり
  冬の川兵糧運ぶ軍舩
思ふまヽかき候、調箱もなく塩味もなき砂多きこはめしの様なれど一寸御笑草までに候、日もくれて候得バこヽにて筆とめ申し候、草々
皆様へもよろしく猪川先生の方ニへもよろしく願上候、拝
                清造拝
   野村さま
       参る
けさの地震如何なされしか、恋の思でも鶴町かの新聞まわしへ私の雑誌もて来よといはれ御送り被下間敷や!
 
  【解説】「家兄の病氣なるに御見舞被下難有存じ候」は、一学年上の後藤清一郎のことであろうか。同じ猪川塾の塾頭のような立場の人。「新刊書物の御批評など面白く讀み申候」「文藝倶楽部の発賣禁止ニハ驚き候、また裸体画かとぞんじ候」の記述が注目される。また「杜陵吟社にて新俳人御発見のよし、よその事とも思はれず嬉しく候」といってその喜びに励まされて作った「仏十句」他列記している。

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