盛岡タイムス Web News 2011年 5月 15日 (日)

       

■ 〈あなたへの手紙〜詩人のポスト〉金野清人 奇跡の一本松

平成の大津波に襲われた高田松原で
一本だけ生き残ったアカマツよ
 
覚えておるだろうか
若い頃
盆波を物ともせず
陸前高田の竹馬の友と
怒濤の沖に向かった無鉄砲な俺を
 
俺は今でもおまえのことを
しっかりと覚えているよ
仲間と遠浅の砂浜を見事に縁取り
梢を渡る風に安らぎを添え
訪れる人人の目を喜ばしていたことを
浜風に耐えながら白砂を守っていた姿を
 
今、無情にも
怒濤に青松の枝葉を奪われて
七万本の友垣も失って
奈落に突き落とされてしまったおまえを
何と言って慰めたらいいのだろう
 
二度と会えないちちははを慕い
逝ってしまった仲間を偲び
悲しみの淵に沈んでいるおまえを
何と言って励ましたらいいのだろう
 
そう、そう
みんなおまえのことを心に掛けてるよ
ことさら俺はおまえに思いを馳せてるよ
ひとりぼっちになんかしないから
たったひとつの命を大事にして
いっしょに生きていこう
 
たった一本
生き残ったアカマツよ
俺はおまえの幹を抱き締めてやりたい

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