盛岡タイムス Web News 2011年 5月 16日 (月)

       

■ 〈幸遊記〉19 照井顕 向井田郁子の太鼓の響きに誘われて

 5月10日「開運橋のジョニー」への手紙が届いた。差出人は向井田郁子。一瞬目を疑った。

  えっ!もしかしてあの人?そう、かつて盛岡タイムスの記者をしていた方で、今でも時折紙上でその文章を見かける名前。封を開くまでの間に、僕の頭は26年前の1985年8月2日へとさかのぼる。

  陸前高田市の酔仙酒造の中庭で8月4日(日)に開く「日本ジャズ祭」の宣伝の為に「悟空」という名のジャズドラマーにトラックの荷台でドラム演奏してもらい、陸前高田から盛岡へとやって来て「さんさ」が始まる直前の街で人々の目と耳を釘付けにしながら、上盛岡駅へ着いた時、盛岡タイムス社から飛び出して来て名刺を差し出した人。それが向井田郁子さんだった。多分、お会いしたのはその時一度きりかも?

  どうして忘れやすい僕がその時の事を覚えているかというのは、多分に作家の故・向田邦子に字が似ていることからの印象かも知れない。なぜか僕は今、向田さんが愛聴していたという「ミリー・バーノン」という幻のシンガー唯一のアルバム(’56年の2月録音)の「イントロデューシング」を聴きながらこの原稿を書いていて「スプリング・イズ・ヒア」の歌詞・春が来たというのに私の心は浮き立たない…「セントジェームス病院」「今年のキッス」(37年の映画・陽気な街の主題歌)など心に染みる。

  そう、向井田郁子さんからの手紙には、彼女が書いた70行からなる一編の詩が添えられていた。「水仙の花咲く海辺で」というタイトル。

  「太鼓の響に誘われて 水仙の黄色い花を見に行った 南の街で 春の日の晴れた午後 大地が揺れた 中略〜 時間の流れが 一瞬止まり 水仙の花がいち早く咲く 川原の土手も 朝日に賑わう港の街も ジャズが似合う街並みも みんな呑み込んだ 中略〜 ここは太鼓の命が息づく南の街 春の息吹がいちはやく訪れる街 その時が再び来る日を 私は信じて約束しよう その時、私は必ず訪れる この街の素敵な季節を探しに 会いに来る」。

  彼女もまたジャズ・ピアニストの穐吉敏子さんと同じ中国の遼寧省遼陽市から引き揚げてきた女性でした。
(開運橋のジョニー店主)


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