盛岡タイムス Web News 2011年 5月 20日 (金)

       

■ 〈胡堂の青春育んだ書簡群〜学友たちの手紙〉25 八重嶋勲 当地ニ軽業のあるよしにて…

 ■後藤清造

  49 半紙 明治34年1月15日付
 
宛 盛岡市馬場小路七 照ゐ方 野村長一様 金壹圓在中
発 石とりや(花巻市石鳥谷町好地) 後藤清造拝 一月十五日
唯今ハ少年世界難有奉存候、金壹圓也封入送上候間、明日月謝御はらひ被下度、一重ニ奉願上候、草々
             清造拝
     野村君
皆様へよろしく、家兄ますゝゝよく候得共、今三、四日ハ出盛致無候、以上
 
  【解説】金一円を同封、猪川塾の月謝を納めてくれるよう長一に依頼している手紙。
 
  50 巻紙 明治34年1月16日付
 
宛 盛岡市馬場小路七 照ゐ方 野村長一様
発 石とりや(花巻市石鳥谷町好地) 後藤清造拝 一月十六日
昨昼ハ時間切迫したる為め大急ぎにて停車場へ参り候、處夭なく赤キ車ハ廿四分後れたる故無事ニのりて無事ニ帰りて候、
然るにキ車中にてハ別段の珍事もなく候得しが、たヾ矢幅の女なりといふ奴の口の悪きニハあきれ候、酔ひにし男をとらひ(へ)ての痴話、われハきくニ得堪えで打腑しをり候、
昨日兄よりのはがきにもありし如昨日より当地ニ軽業のあるよしにて今日ハ家を挙げてそを見にゆくとて今にさわぎ居り候、
評判御非常にて綱渡りの女ひとりにても木戸銭代ハあるなど話し合ひ候、委細ハけふ見たる上にて申上ぐべく候、
昨昼御地停車場にて後藤の省吾君とあい候得しが、氏の話に而ては来週の金、土ハ休まぬと一条先生の話せしといひ、こは今までハいへも金、土とのみ休みしかバ補はねバならぬ故と申され候得しが休みに変更ありし時は早速御しらせ被下度候、なほ今日か明日今世少年参るべくニ付御覧の上にて御送り被下度候、先ハ右御願迄、草々
             清造拝
   一君
   潤君
   長一君
   丹次郎君
      玉机下
のむらさまへ
私も充分六〇五の原稿は書き参るべく候間、御安神被下度、岩動様ハ如何致され候哉、古木の阿部さんの遺稿ハぜひともに督促して物にする様御取計被下度、なほ皆様の方をもよしなに御取計ありて遺憾なき様願上度候、以上
 
時ハ八時過ぎたりけり、今なほ□、夜は暗らし、風も吹きたれど兄の病怠たりしに心安く火燵ニもぐり込み候得しニ郵便!との聲してやがて下女の持来けるを見るに雑誌らしきものあるよりひったくって見候處、折角待ち居りたる日本人、また君が玉章さへあるにたヾたヾ有り難く存じ候、
ともかくと玉章の封おし切り讀みとてなくに我クラ(ッ)スの新年会ハ来ん日曜日ならめとの事嬉しく候、私もそれまでニハ出盛致すべく候得バ皆さまへも宜敷奉願候、(出席する様御取計下され度候)
小天地の鶯ごうも参り候よし中にも鏡花氏の作ありとの事、兄が御喜びハ状袋に盛岡市高野聖と認めたるにて讀まれ候、新年の讀物数多くさぞ御忙はしかるべく候、本が今少し御待候得、私も御手助け可仕候得バ安村氏の新ら服さらぬだに大きい頭なるニさりとハなほさら目立ツべしと存じ候、この卜占屹度ほんたうなるべしと信じ申候、大川氏の一番ハ又得意顔目に見ゆる様ニ候、
校長氏の氣取り中に滑稽の頂上ならんと思はずふき出し候、五山老が御話ニハ一層噴飯致候、いかにも滑稽の儀に候、
ゐ川氏の御骨折ニハ私も驚入候、氏が此頃の進歩驚くの外無之候、こんな事ハさしおいて」
先づ々々御目出度う存じ候、鶴亀鶴亀松竹松竹!
吉之助が演ずるを見るより兄の演じ方は凄いものなりしならんと存じ候、
モンパもて包める顔のなくなりしハビールニハあらでビーティなりしぞ驚きイキ候、私の魂も驚きのあまり飛び候と申したら兄ハ定めし御怒りならんがこれハたヾ筆の序でに候へバ御安心被下度候、いつも々々兄が何福とやらにハ大白を挙げて賀し候、これハもと々々出来ぬ注文ニ候得バ出盛の上ゆっくりと御祝ひ申すべく候、
冷かなどハ哨兵線まではりての御断りとの事ニ候へども私のハ決して々々そんな事にてハ無之、あの温(ホト)らかすのに候得バ、この節冷(ヒヤ)かんハいやなるべきこと温(アツ)かんなら御喜びの事と存じ候、御心配など御無用ニ候、
書きなぐりの俳句(といへバよい様されど)御批評などし被下難有奉存候、
今よりハ時たま句作仕度候へバ、随分共に御世話被下度候、今夕價格標記とやらにて月謝送上候得しが何とぞ可然も奉願上候、拝
               清造拝
   野村さま
      御許へ

皆様へハ相変らずよろしく願上候、西川君、河野君、安村君、村ゐ君、澤田、平賀、佐々木君なぞへもよろしく、岩動両兄へハ盛岡に御出やら日詰に御出やら分らぬ故年賀状をも差し上ず御無沙汰のみ致居候得バ兄よりよろしく御詫被下度候、猪川先生の方々へも宜敷願上候、別封高橋氏へ御渡し被下度候、私ハ眼をやみこまり候、面白き事もあらバ御しらせ被下度候、以上。筆をおいたら十一時が鳴り候、
 
  【解説】「私も充分六〇五の原稿は書き参るべく候間、御安神被下度」「折角待ち居りたる日本人、また君が玉章さへあるにたヾたヾ有り難く存じ候」「小天地の鶯ごうも参り候よし」「ゐ川氏の御骨折ニハ私も驚入候、氏が此頃の進歩驚くの外無之候」に注目した。


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