盛岡タイムス Web News 2011年 5月 28 (土)

       

■ 〈不屈の意志〉ネクサス・中村正社長に聞く 自然には治癒力がある

     
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  環境アセスメントなどを手がける盛岡市のネクサス(中村正社長)。東日本大震災津波による環境への影響について中村社長に聞いた。津波による土壌の塩害や、海の生態系については数年で回復するが、風景は100年単位の復興を必要とするという見方を示す。原発問題を教訓に「分散」の哲学を語り、魂のある復興を提唱する。(鎌田大介)

 |地震後の業務はどのように変わったか。

  中村 3月納期の仕事は終えていて、3月スタートの仕事がストップし、業務的には痛手になっている。環境調査は津付ダムのアセスの現地調査を終えて、報告書の取りまとめ段階だった。あとは内陸部の仕事で現地調査は3月前半で終わり、地震の直接的な被害や影響はなかった。津付ダムは環境調査し、工事は付け替え道路だけだった。環境影響調査で今後、取り組む調査業務は震災で全部停まった。不要不急の業務の捉え方で、津付の場合は見直し対象になった。

  |津波による土壌の塩害にどのように対処するか。

  中村 時間が解決する自然治癒力で復元する部分がある。耕作地の土壌は物理的、化学的要素で時間の経過により回復が見込める。復旧の視点は自然治癒力に対してどれだけ手助けできるか。塩水に浸かった田は少し様子を見る。技術的に日本には干拓事業で塩害を防ぎ、除塩する体系があるので、あまり慌ててやらなくても良い。自然治癒力とにらみながらやっていくことも大事だ。時間は被災者の生活再建のスケジュールや意欲に合わせた形が良い。多分2、3年、早ければ今年の秋からの降水量が多ければ、来年は何とかなるかもしれない。がれきの処理の絡みがあるので、難しくても2、3年でめどはつく。雨がたくさん降られると大変なこともあるが、天然の恵みが解消する手助けになる。

  |自然の生態系は大分変わったか。

  中村 人間の暮らしに密接に絡んでいる動植物、例えばタヌキは打撃を受けているようだ。農作物や残飯あさりの動物たちも。海洋の生態系はかなり攪(かく)乱された。生態系は地形地質、地盤がありその上に表層の草木があり、空気がある構成。海底地形もかなり動かされた。土砂も動いただろう。

  かなり変わってると思うが、それも回復する。既に残った物を中心に生きる場所とすみかを変えながら、繁殖し始めている。これまでと違う漁場や生息域は変わると思うが、絶滅するということはない。それは漁業者が一番詳しく見えるだろうが、3年5年はかかる。

  一番時間がかかるのは震災前の自然風景。風景の復旧は100年の単位で時間がかかる。風景は見られる物と見る物がセット。三王岩などでは、見る場所が壊れたりたどり着けなかったりする状況がある。

  見られる物としては、高田松原なら100年かかる。見る側は3年や5年単位で、お金の掛けようや力の入れようでやれるだろう。地元の人たちが復旧したい風景を、松林だけでなく、松林を背景に海水浴している風景を復旧したいのか、考えて取り組むことだろう。

  |三陸沿岸のため何ができるか。

  中村 今まで積み上げていたことはなしで、もう一度やり直すことになってしまった。140万県民が多くの県外客を呼んでやり直す。JRのキャンペーンなどでも、「岩手県に来てほしい、とても良いところだ」と、ベースを作り直す。

  漁港も集約化ではなく、個々に取り組んだ方が良い。画一化や統合化されない方が良い。今回の震災は集中統合が復旧を遅らせた。分散や散在して、被害を受けて手が回らなかったということもあるが、それは魂のある復興に取り組める素地ではないか。

  福島原発を見たとき、エネルギーの集中統合は社会全体としてどれほどもろいものか、分散していた方が良いという問い直しがあるのではないか。


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