盛岡タイムス Web News 2011年 5月 29日 (日)

       

■ 〈不屈の意志〉川徳・吉田浩次常務に聞く 地域貢献求められる時代

     
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  川徳(川村宗生社長)は創業145年。大震災の翌日から業務を再開した。店頭に並んだのは食品類が中心。県や警察などからの緊急支援物資の要請にもできる限り応えたという。1400人の従業員を抱える地場の老舗の小売店として、何ができるかを考えた。被災地支援へ地域のNPOとの連携もその一つだった。吉田浩次常務は社会貢献の時代という。被災時の状況や今後の課題などを聞いた。
(大森不二夫)

 |大震災時の状況は。

  吉田 大地震に館内は大変揺れた。まず客に被害はないか、無事か、従業員全員がお客の安否確認と避難口への誘導に動いた。エレベーター、エスカレーターも止まった。各売り場担当者、責任者、建物管理担当者らが慌てず、それぞれ率先して客を避難口に誘導し、外に出した。エレベーター内にも客がいたが、すぐドアを開け避難所へ誘導した。慌てず車の誘導も行った。年2回実施している防災訓練のたまものではないか。従業員全員が慌てず対応した。あとで、そのとき来館していたお客から、大変親切に誘導してもらったとお礼された。当社としては当たり前のことをしたまでだが、やはりうれしかった。従業員は客を外に出したあとに避難した。

  その日、停電のままの状態で午後4時に正式に閉店し、従業員を家に帰した。それから幹部ら22人で緊急会議を開いた。県、警察、東北電力から緊急連絡が入り、食品や衣類など緊急物資の供給の要請があった。即刻できることをしようと決め、在庫の確認や手配をした。館内にあったパンや水、衣類などを集めた。こちらからは持ち出せないので、当館に来てもらい運んでもらった。大量の毛布の要請もあったが、毛布だけは在庫がないため首都圏のメーカーに依頼し、緊急物資として2万枚回してもらった。まだ情報も断片的だったが会議では、この非常事態の難局を乗り越えていこうと意思確認し、翌日の早朝から食品に限り販売しようと決めた。

  |その後の動きは。

  吉田 12日はまだ停電のままだった。館内には入れないので店頭にテーブルを並べ食品類を中心に販売した。全員ではないが多くの従業員も来て早朝から準備してくれた。IBCラジオで情報を流してもらったためたくさんの市民であふれた。もちろん物流も動かないしメーカーからは品は入らない。あるだけの分の販売。13日は電気が復旧したため館内で時間限定で販売した。それからは午後4時までの営業を行い、段階的に時間延長した。

  3月の営業成績は60%ほどで大変な事態と痛感した。なかなか商品も入らず、消費も含め、この先どうなるか心配した。しかし4月に入ってから消費に大きな変化が出てきた。当社では4月15日から従来の営業時間に戻した。ほぼ物流も回復し、商品なども入ってきた。特需といおうか商品が売れ出した。当館に買い物に来る新たな客層が明らかに増えた。沿岸部の方々や沿岸に親戚などがいる市民、支援者らが買いに来ている。食品類のほか下着や靴、バッグなどを買い求める。まとめ買いも増え商品によっては品薄の状態になった。前年をクリアする勢い。この動きは5月になっても続いている。

  |沿岸部の支援は。

  吉田 3月中からいくつかの支援を開始した。盛岡市内のNPO組織や大手メーカーなどと連携し館内や店頭などで市民からの支援物資を集めたり、義援金活動などを実施した。買物に来た市民の方々にチラシなどで事前告知をし協力してもらった。市民の協力がありがたかった。当社では、沿岸部の友の会会員などや沿岸部の商工団体など被災地を回り、困っていることを聞いたり、支援物資など届けるなどの活動も行なった。沿岸部の惨状は目を覆うばかりだが、地区住民らが復旧・復興に向けた姿勢は熱いことを痛感した。6月になってからだが、まずは宮古地区担当の専従者を配置し沿岸地区の方々のニーズを把握して、当社で支援できるような対応を検討している。

  |地域経済の活性化には何をすべきか。

  吉田 沿岸部はあれだけの甚大な被害をこうむったのだから復旧・復興に向けた活動はゼロからの出発で時間はかかろう。ただ早く青写真を出し着手しなければ、さらに時間や金が必要となる。内陸部は人、モノ、そして場所を提供する。NPOと企業がもっと連携して盛り上げる。それぞれのリーダーが借りものでない自分の言葉でメッセージを伝える。そうでなければ人が動かない。経済も回らない。私はほぼ半世紀、小売りの現場にいるが、今は企業に地域貢献が求められる時代になったと痛感している。経済はその活動に付随するもの。現地の本当のニーズを聞き、それに対応することで地域経済が活性化しよう。


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