盛岡タイムス Web News 2011年 5月 30日 (月)

       

■ 〈幸遊記〉21 照井顕 小畑倉治のこれくしょん

 本日2011年5月30日、77歳の誕生日を迎えた小畑倉治さんは、紫波町高水寺の国道4号線のJA古館支所交差点を西へ100bほど入ったところにある喫茶店「これくしょん」のマスターである。

  僕がこの店を知って通うようになって9年目になるが、この店は盛岡から紫波に移ってから19年になるという。「昭和20年代、盛岡の柳新道にできた名曲喫茶“田園”から始まり“ボア”“文化”“ウイーン”といった店を一人黙って、ぐるぐると聴きに歩いたものでした」という小畑さん。

  4年前から店内の壁を、ギャラリーとして開放。書・写真・絵画・手芸・切手などなどの展示を約1カ月という長期間展示してくれることから、いろんな方面の方たちが店を訪れるようになったが、初めて来た方たちが一様にビックリするのは、もうほとんどの喫茶店から姿を消した、アルコールランプサイフォンでコーヒーを入れてくれること。LPレコードでクラシック中心の音楽を聴かせてくれること。

  そう、昔の喫茶店は,皆こうだったと、すっかり忘れ去ってしまっている記憶を呼び戻してくれるのだ。夏ともなると“かき氷”さえも出す。

  ドイツの通俗音楽作曲家といわれたブルック・ミュラーの「天使のささやき」に魅せられてしまったのがレコード収集の始まりだったというが、ある時SP・EP・LPの何百という数の癒やし系レコードを全部捨て去った。

  その絶望から彼を、救ってくれたのは同悲の音楽・マーラーの「第一交響曲」だった。悲しみのふちから、自分をよみがえさせる力を与えてくれたマーラーが生涯に書いた11の交響曲を聴き、特にも9番4楽章の「アダージョ」からは癒やしとは違う、安らぎの境地を見いだすことができたのだという。

  かつて中学の美術の先生だった小畑さんは何十年ぶりかに、鉛筆を握り、店の近くの城山公園に通い、そこにいる今年の干支(卯)の絵を描き「半年間のいきものがたり」という素描画展を「これくしょん」で昨年12月に開いた。一度引いた線は決して消さないで描いたというウサギは美しく、そして優しかった。(開運橋のジョニー店主)


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