盛岡タイムス Web News 2011年 6月 2日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉357 岩橋淳 でも、わたし生きていくわ

     
   
     
  作者の体験を元に編まれた物語。

  突然の事故で両親を失った少女、ネリー。幼い弟と妹を護る術も持たない7歳にとって、目の前に広がるのは、ただ茫漠とした「いま」。身のまわりのことや明日のことを気遣い、憂う前に、大きな悲しみすら受け止めきれません。それでも、現実は待ってはくれません。それまで何をするにも一緒だったであろう3人は、離ればなれになって親類の家に引き取られることになります。

  新しい家族、新しい生活。ネリー自身が望み、身を寄せたジーンおばさんの家は明るく、温かい。いとこたちも親切、編入した学校は楽しいし、友達もできた。そして一番の楽しみは、週に一度、離れて暮らす妹と弟に会いに行くこと…。

  翻訳を担当した作家・柳田邦男さんは、不本意なかたちでご自身の家族を亡くして虚脱状態に陥った時に、一冊の絵本に救われた経験を持っている方です。「大人こそ絵本を」を合い言葉に、家族を喪うという深いかなしみを受け入れ、克服していくひとびとの姿を描いた海外の作品の翻訳を、数多く手がけておられます。

  絵本という媒体が、再出発に向けて背中を押してくれる可能性について、気づかせてくれる1冊です。

 【今週の絵本】『でも、わたし生きていくわ』C・N・マズール/作、E・マズール/絵、柳田邦男/訳、文渓堂/刊、1470円(2009年)。


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