盛岡タイムス Web News 2011年 6月 5日 (日)

       

■ 〈不屈の意志〉メガネの松田・松田陽二社長に聞く 避難所回り無償でメガネ

     
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  メガネの松田(盛岡市大通)の松田陽二社長(59)は、この3カ月ほどの間、被災地の避難所を回り無償でメガネを届ける活動をしてきた。訪れたのは27カ所。困っているだろうと考えてのボランティアだった。1998年から毎年ネパールでメガネ提供などのボランティア活動をしてきた。今年は中止し被災地の支援に力を入れる。松田社長に被災地でのボランティアの活動や今後の課題などを聞いた。
(大森不二夫)


  │大震災直後の状況は。

 松田 地震が起きたとき松園の親戚の家にいた。地震の少し前、携帯がビービーとなった。地震速報が携帯に入った。それから大揺れ。停電になり何だこれはと、何が起きたか理解できなかった。車のテレビを見続けた。とんでもないひどいことになったと思った。それから各支店を回って社員の安否確認とメガネなどの破損状態を見て回った。高松店だけは地盤が弱いせいか、メガネが数本落ち破損した。数万円程度の被害で収まったので軽微の方だろう。その日は帰っていいからと従業員みんなを帰した。次の日も停電で、電話も携帯も通じない。店を回り営業中止の紙を張って回った。

  電気がつき始めたのは13日夕方から。やっと携帯もつながった。支店長には「あす14日からやるよ」と伝えた。14日は全員が出社したが、通常より2時間短縮し午後5時に閉店した。3月は通常であれば新入学などの時期で一番の稼ぎどきだった。今年はまったく駄目だった。3月は売り上げが40%ダウンした。お金は食品などに回った。メガネは緊急的ではなかった。4月に入り少しずつ来客も増えた。新入学もずれ込んだ。90%まで回復した。5月は物流も正常になり売り上げも例年並みになっている。

  │沿岸部に最初に入ったのは。

  松田 3月14日、陸前高田市で避難所生活をしていた親戚を訪ねた。盛岡に連れて来ようと思い車を走らせた。親戚の一人は長部地区の副区長をしていた。区長が津波でさらされ、副区長が区長の代わり。やるべきことがあるから盛岡に行っていられないと断られた。おばあちゃんからも、この地区から出たくないと言われた。コミュニティーが強い地区。仕方ないなと思った。盛岡に連れてくる予定だったので何も車には積んでいなかった。

  │その後、ボランティアを。

  松田 16日、被災地の人はメガネで困っていよう。行かなければとボランティアすることを決めた。ネパール用の在庫がある。今年はネパールは中止し岩手の被災者のため私ができることをやろうと決めた。14日に行ったときはその気持ちはなかった。さまざま集めた。数百本ほど集めた。会社でさまざまな度数の近眼用のレンズを加工した。老眼鏡は出来合いの商品。コンタクト用の入れ物、洗浄液なども用意した。18日、まずは一度行った長部地区の公民館にアポなしで出向いた。許可を取り廊下にテーブルを並べ、自分の目に合うメガネを探してもらった。最初に30代の女性。コンタクトを入れるケースや洗浄水などを求められた。普通は寝る前に外しておくが、避難所では置き場もなくましてケースもない。ずっと付けたままだった。目には良くない。渡したらとても感謝された。近眼のメガネも求められた。普段はあまり掛けないが車の運転や活字を読むときに使用するという人だった。老眼鏡を家ごと流された老人の方も多かった。新聞も掲示板の安否情報も見えず不自由していたようだ。その日は避難所となったお寺、学校、病院などを回りメガネなどを渡した。

  盛岡に戻り、足りなくなった近視用レンズ、コンタクトケースなどメーカーに電話して支援を依頼した。快く承諾しくれ、メガネ資材が送られてきた。県内外の方からも宅配などで送られてきた。何か役立ちたいと考えている人がいることを改めて気づかされた。ネパール支援も役立ったのかとも思った。2回目は3月28日。大槌町職員から、メガネが流され仕事ができない何とかできないかと話がきていた。大槌町の体育館などを回った。役場の職員5人から大変感謝された。このときはメガネのハードケースがメガネ以上に求められた。ここでも寝るときメガネをしまって置くケースがなく、大変困っていた。こういう活動が岩手医大の眼科の先生に知られ、一緒に同行させてくれないかといわれた。4月には一緒に回った。

  │被災地に何が必要か。

  松田 支援物資は足りている。余っている物資もある。衣類などは置く場所がないほど余っている。これからは雇用が最大の課題となる。仕事や仕事場が必要だ。温泉で避難している人の中には、3食昼寝と温泉付きに慣れすぎ、働く意欲もない若者もいる。早く仕事を。子どものケアも必要だ。親をなくした子どもの心のケアが求められる。傾聴ボランティアが必要だろう。今は非常時で平時でない。非常時には強いリーダーシップが必要だ。

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