盛岡タイムス Web News 2011年 6月 11日 (土)

       

■ 〈震災3カ月、復興支援を考える〉注目浴びる遠野モデル

 沿岸被災地の後方支援拠点として遠野市の取り組みが全国的に注目を集めている。内陸部と沿岸部の交通要所にある利を生かし、07年度から大津波を想定した後方支援拠点施設整備構想を沿岸自治体とともに推進。震災発生当日から自衛隊や警察など関係機関と連携し人命救助、物資運搬などの被災地支援の拠点として機能した。市民をはじめ、全国から集まったボランティアも、いち早く活動を開始し、官民一体となった支援活動が繰り広げられている。震災から3カ月が経過。被災地支援の焦点が被災者の暮らしの再建とまちの復興に移る中、同市では医療や就労の支援、被災者を孤立させないコミュニティーケア型仮設住宅整備など、生活再建や広域的な産業復興を促すプロジェクトが動き出している。津波による被災状況は各市町村、各集落によって大きく異なり、多様で息の長い支援活動が求められる。国道106号を軸に沿岸部とつながる盛岡地域にあっても「遠野モデル」から学べることは多い。(2〜4面に特集、11面に関連記事‖取材班)

 遠野市は被災者の生活再建を支えるための具体策を盛り込んだ「後方支援プロジェクト」をまとめた。名付けて「縁(えにし)プロジェクト」。総事業費は約4億4千万円。沿岸部と内陸部を結ぶ交通要所としてまちが発達してきた歴史的な経緯を踏まえ「先人から受け継いだ『縁』を『絆』に」との意気込みを表した。

  プロジェクトは全15事業。「医」「職」「住」による被災者の生活復興支援と、広域的な沿岸被災地の産業復興、ボランティアコーディネーターの派遣・育成など後方支援ネットワークの拡充が柱だ。市の総合計画の中に位置づけて進めていた事業を「被災地支援」の視点で見直し拡充。国の既存制度の活用のほか足りない分は、市単独予算も投入し新規事業として立ち上げた。

  このうち、仮設住宅は、同市を拠点に活動している東京大学の研究者からモデルプランの提案があり、コミュニティー型仮設住宅を7月上旬の完成を目指して整備する。40戸の個別住宅のほか、高齢者のデイサービスセンターや子どもの一時預かり施設を想定した「サポートセンター」(集会所)を設置。地元に帰るまで安心して住める仮設の街をつくろうというアイデアだ。

  仮設住宅の設置そのものは県の委任事務で県支出金で賄うが、モデルプランを実現するのに余計にかかる事業費は災害義援金の一部を充てた。市内に一時避難している被災者を優先し1日から募集を開始している。

  医療や保健分野の支援では、情報通信技術を駆使して遠隔医療や保健活動を試みてきた遠野の特長を生かす。助産院と中核病院を情報インフラで結び、母子保健をサポートする「モバイル遠隔妊婦健診」のサービスを沿岸被災地の妊婦にも提供。加えて遠野在住の助産師、保健師、看護師、そのOGらのマンパワーを生かし被災地での周産期のサポートを充実させる。テレビ電話を使って遠隔地にいる医師と遠野在住のスタッフが市民の健康管理を指導する「地域ICT遠野型健康増進ネットワーク事業」のノウハウとシステムも希望する被災市町村に貸し出す。

  一方、被災者の就労支援では、被災者を雇用する事業所に対して社会保険料などの事業主負担を市単独で全額補助(当面3年間限度支援)。12年度からは高校新卒者にも対象を広げる。

  国の緊急雇用基金事業を活用し、市の後方支援業務に従事する被災者を14人雇用。職業訓練に市内に通う被災者を支援するため遠野駅と市内を結ぶ「就労支援バス」も運行する予定だ。

  さらに、被災地の産業復興を後押しするため、仮工場・仮倉庫などの用地として未造成ではあるが遠野東工業団地の用地(5・1f)を無償で貸し出す。被災企業が市内に仮設事務所や仮設倉庫を借り上げる場合も市単独で借上料の5割(補助限度額1カ月に付き10万円)を補助。期間を限定した支援とし
、被災した地元で再起する足がかりにしてもらう。

  ほかにも、遠野文化研究センターを核に、被災した文化財や博物館資料、図書館資料の状況調査、資料復元、献本など文化による復興支援を計画。12日には文化と災害復興を考えるシンポジウムも開催する。馬力大会など年間を通じた観光イベントには被災者を大型バスで送迎するなど、復興支援イベントの位置づけで盛り上げを図る方針だ。

  同市経営企画室の菊池文正経営企画担当課長は「小さな市で、できることは限られている。身の丈を意識しながらも、それぞれできる後方支援をオール岩手でやっていくときではないか」と話す。

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