盛岡タイムス Web News 2011年 6月 12日 (日)

       

■ 〈詩人のポスト〉佐藤康二(雫石町) 金魚売さんへ

  金魚売さんへ
          佐藤康二(雫石町)
 
裏通りは
まだ砂利道だった
蝉もいっぱい鳴いていて
 
乾いた道を
ほそぼそとひとすじ濡らしていく
金魚売の
おじいさん
 
夏休みのこどもが
氷屋の店の中から覗いていた
 
たくさんの
まるい金魚鉢をめぐる
たくさんの
赤い浴衣のさかなを
 
冷たいスプーンを咥えたまま
外に出たこどもは
 
水を零さないように
静かにリヤカーを引いていく
金魚売のおじいさんを見送った
それでも
砂利道に残る
ほそぼそとした渚
 
あの
きれいに澄んだ赤い水のこぼれる道
 
角を折れて
消えていった金魚売さん
 
渚も
すぐに消えてしまったけれど
いつまでも
こどもの瞳を濡らしていった

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