盛岡タイムス Web News 2011年 6月 19日 (日)

       

■ 〈不屈の意志〉ホテル加賀助・川口善昭社長に聞く 観光客の動きは見えず

     
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 雫石町のホテル加賀助の川口善昭社長に、震災後の鶯宿温泉の状況や、被災者への対応などを聞いた。鶯宿では同ホテルのほか森の風、長栄館が被災者を受け入れ、地域ぐるみで再起を支援している。風評被害の中にある観光業者として、平泉の世界遺産登録に希望を見いだしているが、福島原発の影響をなお憂慮する。
(鎌田大介)

 |震災後の状況は。

  川口 地震で泊まりがなくなり、会社としては雇用調整助成金を活用して休業届けを出した。3月26日に第1回の1次避難者で、鶯宿2軒と繋1軒に受け入れた。故郷を去るのがつらかったのか、当日は申し込み数より3割ほど少なかった。さらに追加で78人ほど来て、そこで休業をストップした。被災者受け入れのため従業員は戻ってきた。3カ月過ぎ、被災者は3分の2くらいになった。今月に入って仮設住宅の建設が進み、抽選回数は1週間に1回くらいあると聞いた。随時、皆さん抽選に当たれば退去していく予定と聞いている。一般客は連休のときは予想以上にあったが、連休を過ぎるとまた減った。やっとこのごろから通常の人数よりは少ないが、少しずつ動きが見えてきた。土曜日中心、近郊のお客さんは戻りつつある。観光客はまったく動きが見えない。

  こちらの観光シーズンの幕開けは4月の半ばから始まる。長い冬に耐えてあと1カ月少しの辛抱という矢先に地震が来て、サクラの予約で混んでいたのが全部なくなった。経営的には本当に大変。経営者は金融機関に資金繰りや運転資金の必要から行っていると思う。今年の観光客は東北の夏祭り、ねぶたや竿灯やさんさ踊りから始まると思っている。

  今までの経験が壊されて環境が一変した。被災者に比べれば、まだ環境が良くても、わたしたちは自粛ムードや、総会が中止になったりした影響がとても大きい。観光客は西の方から来るが、福島の原発事故の問題がある。まだ収束していないし、長引けば事態が深刻化する。

  |被災者受け入れで苦労したことは。

  川口 団体生活なので会話や世間話を重視している。2カ月半もいれば、お客様と宿屋というより、少しラフになってきた。また長栄館、森の風、加賀助に避難している人を町内の病院に週1回、無料送迎している。

  最初は神経を使った。家も何もなくして失意のうちに来られたのだから。被災者の皆さんは「大槌はどうなっているのか」と、地域のことを心配していた。仮設住宅に当たったり、盛岡市内や矢巾町にアパートを借りて移ったり、将来設計で2年間はこっちにいたいという人も多い。年金をもらっている人は地元の仮設を待っているが、働かねばならない人は家に帰っても仕事がなく、盛岡市内や花巻などに仕事を見つける人が多い。若い人は新しい職場なり、自活しなければという意気込みは出てきた。子どもを持っている人は大槌に戻らないでこちらで探しているようだ。

  |復興のため必要なことは。

  川口 盛岡には復興支援者が来ているが、鶯宿に復興支援者は来ていない。地域的に遠い。毎年やっている老人会など自粛しないで来てもらえればいい。県のショートステイは3軒の避難所以外の一般旅館で受け入れており、町の観光協会がリフレッシュの企画を募っている。これからは切り替えが重要。被災者から一般の人にシフトしなければならない。平泉の世界遺産は、観光では唯一の明るいニュースだ。県を挙げて中央へキャンペーンしないと、狭い地域の誘客活動はなかなかできない。県の観光協会を中心にキャンペーンをしてほしい。せっかくの好機と思ったが、あまり良くなかったということがないように。ただ原発で県南から基準値を超えたものが出たのは残念だ。原発と観光は福島だけの問題ではない。


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