盛岡タイムス Web News 2011年 6月 23日 (木)

       

■ 〈不屈の意志〉
  中小企業診断協会県支部・宮健支部長に聞く 街づくりは一品料理

     
  震災後の状況を語る宮支部長  
 
震災後の状況を語る宮支部長
 
  中小企業診断協会県支部長の宮健氏に東日本大震災津波後の支部の対応と、今後の地域経済への助言を聞いた。同協会の会員は盛岡市内の1人が行方不明になり、支部長として心を痛めている。被災企業に対しては経営意欲の復活を求め、復興支援の制度の積極的な活用を促す。弁護士など士業懇談会との連携により、被災地の経済をてこ入れする。(鎌田大介)

  -震災時の状況は。

  宮 支部長として会員の安否確認をした。会員は38人で八戸、久慈、陸前高田など沿岸は3人だった。高田の被害を見ると会員は無事でいるのか、電話は通じないし安否が分からなかった。やや高台に自宅があり、本人も自宅も家族も無事だったのが分かったのが1週間後。沿岸部の会員ばかり気にしていたら盲点があった。

  盛岡の会員で大手会社の岩手支社長が行方不明になった。たまたま沿岸のお得意さん回りで大槌の店で用談中に、津波が来ると店主に言われて店を出て消息が切れた。分かったのが約1カ月後。その店に出向いて足取りを聞いたり奥さんと連絡を取ったりしたが、会員の中から行方不明者が出たのが、支部長とすれば心残りで大きな痛手だった。

  -協会としてはどのような支援を。

  宮 弁護士会、社労士会、司法書士会などが無料相談会をするが、中小企業診断協会として何ができるか今回ほど真剣に考えたことはなかった。今、被災した中小企業の経営者が何を聞きたいかと言うと、家族を含めた生活をどう維持するか、失われた預金通帳や印鑑、権利書などを法的にどう処理したら良いかという法律相談ではないか。

  当面の資金繰りは政策金融公庫もいち早く沿岸地区で相談会をした。各銀行、信用金庫がそれぞれ相談窓口を作り、猶予については弾力的に取り扱ってくれた。当面の資金繰りは中小企業はある程度救われている。

  これが落ち着いて2、3カ月たったとき、自分は前にやっていた商売を復活できるか、どういうことで生活の原資を生み出したらいいか、生活相談から経営相談に切り替わる。

  最近歩いて見て感じるのは、商売を再開できるのは5割から7割程度だろうということ。この機会に後継者もなく廃業する人もいる。この2、3カ月は商工団体が地元の業者の意向確認に追われて今日を迎えた。われわれの出番はまさに今から。被災地に行って無料何でも相談会をやることになった。

  -被災地の現状を見て。

  宮 高田から久慈まで12市町村が被災したが、それぞれの街づくりの動きには温度差がある。大きな原因は港の復旧ができたところとできていないところの差が大きい。宮古は岸壁が横付けでき、漁船が入って市場機能も回復しているが、釜石と大船渡はまだ。そこに張り付く水産加工業者、冷蔵庫、運送業が全く見通しが立たない。市街地の被害が全滅状態のところと、商店街がかろうじて残り、建物が使えるところがある。

  わたしは「街づくりアラカルト」と言う。定食ではなく一品料理。それぞれだ。街づくりはそれぞれの被災状況と町の形態に応じた復興計画が出てこなければならない。それが出た段階で中小企業者がどの場所でどういう商売をやるかという意欲が出てくる。そのとき中小企業診断士の役割が問われる。

  もう一つは二重債務の問題。すべて一括で帳消しというわけにはいかない。借りた経緯や今後どうするか、経営者の意欲や能力を見て個別対応していかざるを得ない。復興計画をどうするかと言えば、平成の徳政令と言われるが、過去の借金は全部棒引きとはいかない。どういう形で決着するか中小企業者は見ている。街づくり、二重債務の問題がどうなるか、ある程度めどが付いた段階で、中小企業のこれからどうするかという課題が出てくる。

  -県内経済復興のためには。

  宮 ひとつは行政機能の方向性が大事。経営者の経営意欲が今ほど問われることはない。今まで10人くらいの経営者と相談で会った。相談に見える人はとにかく何としてもやりたい人。その背後にいる意欲を失った人については手の差し伸べようがない。

  国や県や市町村の支援策が出ているが、本質的には中小企業には自助努力が求められている。立ち上がろうとする人に補助金で賄ってあげる分野は非常に狭い。企業には職業選択の自由があり、誰にやらされて商売を始めたわけではない、決着を付けるのは自分で判断せざるを得ない。金融支援は融資はする、融資と利子補給の制度や、県の若干の助成はあるが、基本的には融資と利子補給と信用保証制度で立ち直る。助成金をばらまくのは限られている。その中で使える制度を関係団体に問い合わせ、できるだけ多くの人に立ち直りのきっかけをつかんでほしい。自分で立ち直りの道を開くしかない。できるだけ専門家の指導を受けながら、行政に相談してほしい。

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