盛岡タイムス Web News 2011年 6月 25日 (土)

       

■ 〈不屈の意志〉廣田酒店・廣田英俊店主に聞く 頑張ることが地域の力に

     
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  創業108年の紫波町の老舗蔵元、廣田酒造店。店主は5代目の廣田英俊さん(42)。大震災で蔵の一部が破損し、親戚を亡くすなど経済的、精神的なショックを受けた。日本酒の需要は長期低迷中。風評被害で「自粛」の第2波にも遭遇した。現在も蔵の壁は修理中だが、自社の復興と被災地の支援などを続けながら需要喚起に力を入れる。震災からの経過や今の心境などを聞いた。
(大森不二夫)

 |震災時の状況は。

  廣田 得意先に清酒を届けに行く途中に地震に遭った。電信柱が揺れていた。車を止め、地震が収まってから、店に引き返した。商品を届けるどころでなくなった。店の中の酒は大丈夫だった。蔵の壁が崩れていた。窓が落ちていたり、照明や天井などが壊れた。幸いスタッフにけがはなかった。何せ、100年以上経つ木造と土壁の建物。ただし、鉄筋で補修はしてあるので建物自体は大丈夫だった。壁は今も修理中。大工が忙しくてこちらまで回らないようだ。

  |仕込みの時期だったのではないか。

  廣田 当店では3月初めまでで仕込みは終わっていた。大震災のときは火入れの段階だった。火入れにはボイラーを使用する。そのため灯油が必要だ。震災の日の午前中、頼んでいた灯油が届いた。まさか、その日の午後にこんな惨事が起こるとは予想もしていなかったが。とにかくこれで火入れをしてタンクに貯蔵することができた。

  |大震災後の商売はどうか。

  廣田 ガソリンも入らなかったので配達はできない状態。問屋も動かない。もっともこんな状態では注文も入らない。スタッフには自宅待機してもらった。このような状態では仕事にならない。震災後の3月はぱったり。売り上げは30%以上ダウンした。しかし、4月上旬から回復基調に向かった。南部美人がユーチューブで取り上げられてから、当店にも注文が入った。当店はユーチューブには出ていなかったが、被災地域の蔵元を支援しようとする流れだったようだ。首都圏、北海道など県外からの注文が増えた。4月中旬からは全国各地の復興支援で注文がさらに増加した。まさに特需。ただ、一過性で終わるような気がする。

  |被災地支援は。

  廣田 清酒には県酒造組合の「がんばろう!いわて」と書いた義援金用シールを貼り販売している。シールを1枚10円で買い貼っている。シール販売の益金は組合が義援金として全額を被災地に寄付している。当店独自のシールを貼り支援することも検討している。最近は神奈川県内でスタートした日本酒義援金プロジェクトに参加し、義援金ラベルを貼った当店の日本酒を飲んで被災地の義援金を送る取り組みも始めた。プロジェクト用の特別純米酒を造った。ぜひ飲んでいただき被災地支援に協力してもらいたい。

  支援を一過性に終わらせたくない。当店独自の支援も検討している。微力だが細く長く支援したい。

  |今後の取り組みは。

  廣田 支援するには、当店が頑張らなければならない。復興支援の風が吹いている間に岩手の酒の良さをアピールしたい。次の世代を担う若者に飲んでもらいたい。酒をロックで味わうための夏限定の本醸造を通販で紹介している。しゃくなげの花の酵母を使用した純米吟醸も発売した。ふくらみのある味の酒を目指している。近々、蔵ごと流された陸前高田市の酔仙が復活するようだ。酔仙には叔父が働いていたが、流され遺体で発見された。同業者の復活を応援したい。優れた蔵元が頑張り、地域の発展に寄与することが、地域全体の力になるはず。蔵の壁は修理中で金はかかるが、それほどの被害でない。津波もなかった。微力だが細く長くできることをしたい。


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