盛岡タイムス Web News 2011年 6月 26日 (日)

       

■ 〈あなたへの手紙〜詩人のポスト〉かしわばらくみこ 夏の声

  夏の声
 
かしわばらくみこ(盛岡市)
 
時鳥の鳴き声が届きました
余震にぼやぼや目が覚めた枕元に
待ち侘びていた声でした
六月の初め、夜更けのことです
 
春が暦からはじかれたような今年
蕨採りをするわたしの背にも
早苗わたる畦で小昼を摂る夫婦の空にも
郭公のこだまを聴きませんでした
自然は五月をもこのまま終わらせるのか
と諦めていたら
初鳴きをみとめました
十日前です
 
あなたもそろそろかな、と思っていました
よく渡って来てくれましたね
やっとわたしに初夏が訪れました
 
時間を秤にかけた緻密な托卵
絶え間ない鳴き声、その奇矯な聞きなし
夕影鳥などと呼ばれて
万葉びとに愛され、疎まれもしたというあなたが
わたしの引出しを自由に開け閉めして
眠りを阻みそのくせ眠らせるのですが
 
違う夏のようです
 
きのうは何処の山林で夜が明けましたか
景色に海が見えますか
きょうも裏の雑木林は閑(しずか)です
 
三陸の浜辺に咲くニッコウキスゲを新聞で見ました
人々を、友人を潤おした町
そして、現在(いま)を暮らす町です
遠い昔の貝殻を耳に当てれば、潮騒とともに
ぼろぼろの夏を鳴く
あなたの声が響いてくるようです。

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