盛岡タイムス Web News 2011年 9月 11日 (日)

       

■ 〈震災から半年〉希望の音色を奏でるために 教師の元にピアノ届く

     
  ピアノ教室を再開する田村尚子さんと、日本ピアノ調律・音楽学院の学生たちが贈ったピアノを調律する加藤令樹さん(陸前高田市竹駒町の仮設店舗で)  
  ピアノ教室を再開する田村尚子さんと、日本ピアノ調律・音楽学院の学生たちが贈ったピアノを調律する加藤令樹さん(陸前高田市竹駒町の仮設店舗で)  
  東日本大震災津波で被災した陸前高田市高田町のピアノ教師田村尚子さん(51)のもとに、東京都の日本ピアノ調律音楽学院(斉藤成一郎院長)からアップライトピアノ1台が贈られた。芸術文化活動による被災地支援を続けている、いわて文化支援ネットワーク(瀬川君雄代表、盛岡市)が仲介した。多くの人の善意で届けられたピアノが、被災地の希望になることを願っている。(馬場恵)

  田村さんは9月15日にオープンする陸前高田市竹駒町の仮設店舗でピアノ教室を再開する。5日、ピアノを贈った日本ピアノ調律・音楽学院で、調律技術を指導する加藤令樹さん(30)が教室となるプレハブの店舗を訪れ、搬入されたピアノを調律した。

  贈られたピアノは同学院で学ぶ学生約20人が、被災地への思いを込めて修理したもの。反響板のワックスをかけ直したり、ピアノ線を調整し直したりして、ほぼ新品に近い状態に仕上げたという。加藤さんは「ピアノを弾いている間だけでも、つらい現実を離れ、音楽の世界に浸ってもらえれば」と願った。

  3月11日。田村さんのピアノ教室を兼ねた自宅は津波にのまれた。幸い、夫や娘は無事だったが、多くの親戚や友人が命を落とした。慣れ親しんだ町の中心部は、ほとんど壊滅。「ピアノはぜいたく品。もう弾けない」と落ち込んだ。

  立ち上がるきっかけになったのは、子どもたちのやる気と保護者の励ましだ。教え子の一人は、仮設住宅で画用紙に書いた鍵盤で練習していた。

  「大人は生きるのに精いっぱい。でも、子どもたちは普通の日常を取り戻したいと思っている。1人でも2人でも弾きたい子がいるなら、ぐずぐずしてはいられない。思い切り弾ける環境を作らなければ」。被災を免れた2人の生徒の自宅を借りてレッスンを再開。
仮設店舗での教室開設にこぎつけた。

  被災前は、教室を卒業した大学生や高校生も顔を出し、後輩たちと焼きそば作りや流しそうめんを楽しむ、にぎやかな教室だった。発表会にはピアノの演奏だけでなく音楽劇にも挑戦し絆を深めた。

  津波で多くの子どもが家を失った。両親を亡くした教え子もいる。震災後もレッスンを続けているのは5歳から中学2年生までの11人だけだ。親の生活も苦しい。地域でピアノ教室が受け入れられるのか、迷いがないわけではないが「子どもたちが、いつでも戻って来られる場所を準備しておきたい」と音楽の力に希望を託す。田村さんのもとには、さらにもう1台、高知県の支援者からピアノが届く予定だ。

  いわて文化支援ネットワークは活動の一環として、全国に楽器をはじめ、楽器の運搬、調律などに充てる活動資金の寄付を募っている。これまでに、被災した音楽教師や音楽を志す子どもたちにピアノ、バイオリンなど約10台を仲介した。楽器を望む被災者からの問い合わせは続いており、引き続き協力を求めたいという。

  同ネットワーク副代表の坂田裕一さん(58)は「暮らしの復興は文化と一体となってこそ成し得る。暮らしに安らぎを与える上で文化は大切な役割を果たすはず。全国からの支援をお願いしたい」と呼び掛ける。

  いわて文化支援ネットワークの事務局は、盛岡市肴町4の20、永卯ビル3階、NPO法人いわてアートサポートセンター内。問い合わせは電話019-604-9020へ。


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