盛岡タイムス Web News 2011年 9月 18日 (日)

       

■ 〈詩人のポスト〉照井良平 きみはどこに

   きみはどこに
               照井 良平

 
おーいと
きみを呼んで見るとき
返事のないきみはいつも
すぐに駆けていけるようなところに
ほとんどいない
そんなときのきみは
松倉沢のイワナと遊んでいたり
シラネアオイの花と語り合っていたり
ピリカの国を旅している
青空のときには
サラサラ流れる川のほとりに寝ころんで
木漏れ日と語り合っている
といつの日だったか言っていたことがある
今日も 返事のない昼下がり
誰かと語り合っているのだろうか
この頃の話題となれば
大津波後の原発や復興のことだろうが
どちらも想定外や
話題では済まされない
悲しいほどを過ぎるほどの
痛々しい出来ごとだ
それゆえきみは
かなり興奮して語っていたね
特に原発などは石灰があったにもかかわらず
炭鉱を潰し急ぎ過ぎた結果だとかね
この有限の世界を不眠不休で急いでいると
何故こんなに急がなければならないのか
立ち止まり確認しながら
生きれば良いのにと語っておりましたね
成長発展の向こうに
どんなデネブの国が待っているというのか
天まで伸びる木などないのにねと
今なら秋だから
夕焼け空が赤トンボを呼ぶ
一面のすすきヶ原で
跳ねて飛んで
転け笑いながら前に歩めば良いのに
と語っていたきみに
ふむふむわたしも頷きながら
今日は夕焼けかなと
シルク雲が流れる空を見上げれば
ふと なかなか進まない
リアスの復興が瞼の波間に浮かび
半ば生産性があがらないからと
小さな港町 限界集落を見捨てることは
食の豊かさ地域の豊かさ
長い目で見れば世界の日本という集落の
食の豊かさを潰すことだ でしょう
などとちょっぴり威張って戯けて見せたり
生産性があがらないのが豊かさなのだと
語気を強めてみたり
そんなこんなを語り合ってみたい
そう思っているのですが
今日はどこを歩いているのか
おーいと呼んでも
近くの田んぼの稲穂が
風に揺れて
笑っているばかりだ


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