盛岡タイムス Web News 2011年 9月 20日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉131 及川彩子 トルコ洞窟生活体験

     
   
     
  この夏のバカンスに、私たち家族は、トルコの東に広がる世界遺産「カッパドキア」を訪ねました。火山活動により、凝灰岩と溶岩層が何層にも重なった大地が、何万年もの間に風雨で侵食され、キノコ岩に代表される不思議な奇岩地帯が生まれたのです〔写真〕。

  ベネチアからトルコの首都イスタンブールまで飛行機で2時間、小型プロペラ機に乗り換え、カッパドキアまでさらに1時間。周囲50`に及ぶ奇岩地帯には、観光地化している町もありますが、私たちの宿は、あえて岩をくり抜いた洞窟ホテル。

  案内役は、流ちょうな日本語を話すトルコ人ガイドのメルバさん。さまざまな岩群、バラ色の谷、延々と続くブドウ棚そして村の人々の暮らしぶりも眺めながら3日間、見て回ったのです。

  自然美に圧倒されながらも、心に残ったのは、その奇岩群がキリスト教徒の隠れ家に利用され、今も住居として存在するという人間の歴史そのものでした。

  この大地に人間が住み始めたのは、紀元前8千年以上も前。その後、鉄を発見したヒッタイト人、ペルシャ人、ローマ人の侵入を経て、4世紀にビザンチン帝国が成立。その頃から、キリスト教徒がアラブ人の迫害から逃れるため岩に穴を掘り、住居・教会そして地下都市を造り始めたのです。

  岩の家は時に要塞、また一度に5千人もの人々が住める地下都市は、地下8階もの巨大なアリの巣です。その暗い迷路を歩きながら、人間の知恵と信仰の力には驚かされました。

  通気性が悪く、湿度のため肌寒く、決して快適とは言えない洞窟住宅。ホテルの部屋も、空気の動きでカサカサと音を立てる壁、時に寝顔にピシャリと砂の粒…。

  世界遺産に登録されて以来、多くの岩が住居禁止になったと聞きます。「保護目的は分かるけど、人が住まなくなると住宅は崩れてしまうのです」と将来を憂うメルバさん。その言葉が心に残りました。

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