盛岡タイムス Web News 2011年 12月 1日 (木)

       

■ 〈夜空に夢見る星めぐり〉295 八木淳一郎 星空の十字架

 
     
  秋の西空に立つはくちょう座の十字架(写真は9月27日午後11時50分撮影)  
  秋の西空に立つはくちょう座の十字架(写真は9月27日午後11時50分撮影)  
  早いもので、今年も師走を迎えることになってしまいました。一方、そんな慌ただしい中にも、クリスマスの行事が1年の最後の楽しみとして残っていて、しばらくは日本中わくわくした雰囲気に包まれます。

  クリスチャンであろうとなかろうと、楽しそうなことはどんどん取り入れる、日本人の得意技でもありましょう。十字架のペンダントなどをアクセサリーのつもりで気軽に身につけているのを見たら、本当のクリスチャンさん方の中にはきっと、首をかしげる向きもいらっしゃるでありましょうが、もともと八百万(やおよろず)の神様たちのいる日本のことですから、と、そう考えてもらえれば…。

  さて、その十字架ですが、星空には二つの十字架があります。一つはどなたもご存知の南十字星(みなみじゅうじ座)です。これは日本からですと、沖縄あたりからは上の一つぐらいは見えるとしても、全体の姿を見ることはできません。やはち南の国に行ってみなくてはなりません。

  もう一つの十字架は、北十字のニックネームのあるはくちょう座です。これなら盛岡からも見ることのできる星座です。はくちょう座と言えば、こと座やわし座とともに夏を代表する星座なのですが、今もまだ西の空にのぞむことができるのです。

  盛岡の風物詩の一つに白鳥たちの飛来がありますが、この白鳥たちがたまたま夜、小編隊ではくちょう座のあたりを飛んでいるのを目にした観光客の反応は、言うまでもありません。自然は盛岡が大事にしなければならない宝だと、つくづく思います。

  はくちょう座の十字の姿は、暮れも押し迫るにつれてだんだんと西空に傾いていきます。そしてついには、山並みに十字架が立つ姿を見ることができるのです。このことは前にも述べましたが、例えば網張や御神坂などの山の方に、寒い折りにわざわざ行くのも難儀ですから、実際に見た方は少ないでしょう。

  鳥肌が−寒さのせいばかりでなく−立つほどに感動的なそして幻想的な光景は、目にした人にだけ贈られるクリスマスプレゼント、とでもしておきましょう。

  今の時期であればおおよそ午後9時頃。日に日に時間は早まっていき、クリスマスの頃であれば午後7時前後に、凛とした十字の姿に出合うことができましょう。

  北十字から南十字まで、黄泉(よみ)の国を二人の少年が列車で旅する宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」−幻想的な星空の情景に出合ったとき、誰もが、この物語を思い出さずにはいられないでしょう。
(盛岡天文同好会会員)

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